インターネットやSNSのユーザー数が伸び続け、デジタルマーケティングの重要性がますます高まっている東南アジア。
一方、SNS全体では2023年、旧Twitterが「X」に変わり、TikTokのEC機能「TikTok Shop」も東南アジアで本格スタート、Instagramでは一斉配信チャンネルが全世界で開始、新しいSNS「Threads」もリリースされるなど大きな動きがあり、SNSを活用した販促もめまぐるしく情勢が変わっています。
これまでベトナム、マレーシア、タイ、インドネシアにおける2023年のデジタルマーケ・トレンドをレポートしてきましたが、では東南アジア全体としてはどのような動向があったのでしょうか。
今回は、ここまでのレポートを総括してお届けしたいと思います。
若い世代でTikTokが広がるが、全世代ではFacebook・YouTubeが主流
まず、東南アジア4カ国で主に使われているSNSは何なのか、まとめてみます。ソーシャルメディアエージェンシー「We Are Social」の調査をもとにすると、2023年初頭の時点で、ユーザー数ランキングは次の2パターンに分かれていました。
ベトナム&タイ
1位 |
Facebook |
2位 |
YouTube |
3位 |
TikTok |
4位 |
Instagram |
マレーシア&インドネシア
1位 |
YouTube |
2位 |
Facebook |
3位 |
TikTok |
4位 |
Instagram |
この中で注目すべきはTikTokで、各国とも他のSNSの広告リーチ数は減少傾向にあるのに対し、TikTokは増加傾向となっていました。
インドネシアのスタッフ・ゲンは「僕も含めて、周りではInstagramやTikTokを使っている人が多い」とのことでしたが、3位のTikTok、4位のInstagramは若い世代を中心にユーザーが広がっているようです。
YouTubeではゲーム実況やライブ配信が人気コンテンツとなっているようで、日本人のゲーム実況アカウントを見ている人も多いようです。インドネシアではゲーム実況のWindah Basudara(ウィンダ・バスダラ)さんが2023年に注目を集めていたとのこと。
ちなみに、X(旧Twitter)については、各国とも4位までと比べてかなり少ないユーザー数となっています。
参考
■We Are Social & Meltwater (2023)、「デジタル 2023 インドネシア」、 2023年6月1日
https://datareportal.com/reports/digital-2023-indonesia?rq=Indonesia
■We Are Social & Meltwater (2023)、「デジタル 2023タイ」、2023年2月13日
https://datareportal.com/reports/digital-2023-thailand?rq=Thailand
■We Are Social & Meltwater (2023)、「デジタル 2023 マレーシア」、2023年2月13日
https://datareportal.com/reports/digital-2023-malaysia?rq=Malaysia
■We Are Social & Meltwater (2023)、「デジタル 2023 ベトナム」、2023年2月13日
https://datareportal.com/reports/digital-2023-vietnam?rq=Vietnam
ショート動画を使ったマーケティングが過熱中
2023年、SNSで多くの人が目にするようになったのが、ショート動画です。主流SNSでは一般ユーザーの投稿だけでなく、企業もショート動画を使った販促を積極的に打ち出し、そこから購買につなげるケースも見られるように。
各国、インフルエンサーを起用した販促のための動画や、企業アカウントによる広告動画も増えていますが、現地スタッフたちからもこんな声が聞かれました。
「コロナ禍以降、健康意識が高まっているので、フィットネス系の動画はよく見かけるようになりました」(タイ/パー)
「ExcelやWord、Photoshopといったソフトの使い方のヒントを教えてくれる動画など、マイクロラーニング系の動画が人気です」(ベトナム/リエン)
「ブランドの情報を発信するチャンネルや、ECサイトの使い方や変更点を説明するチャンネル、商品レビューなどの閲覧数も伸びています」(ベトナム/ズン)
またマレーシアでは、女性オーナーによるスイーツやお惣菜のお店がTikTokの動画でバズった例もあったとのことで、小さな商店もSNSを有効活用していることがわかります。
Shopee・Lazadaが安定の人気も、今後のTikTok Shopに要注目
Eコマースにおいても、2023年はSNSに注目が集まっています。
マレーシアのスタッフ・バイは「2023年はTikTokユーザーが増えたこと、ライブコマースが流行したことが特徴的」とのことでしたが、TikTokのEC機能「TikTok Shop」が東南アジアではユーザー数を伸ばしています。
「現状、東南アジアで強いECサイトはまだShopeeやLazadaですが、ベトナムでは収益で見ると、Shopeeに次いで高いのがTikTokになっています。TikTok Shopでは美容アイテムや女性の洋服など、比較的価格の高いものが売れやすいからかもしれません」(ベトナム/ズン)
TikTok Shopではインフルエンサーが美容アイテムを試す動画や、洋服を選んでいる動画などが注目を集め、ユーザーはそれを見て気に入ったものがあればその動画からTikTok Shopに移動して購入できるようになっており、「購入までの流れがスムーズで、ストレスを感じずに買い物ができる」(タイ/パー)とのこと。
ただし、大手のShopeeもこの流れに乗ってライブコマースを取り入れており、特に中年以上の年齢層にはまだ強い支持を得ているようです。
「FacebookとShopeeは連携しているので、フィードにShopeeの広告が上がってきて、そこから買い物をしています」(マレーシア/バイ)
20〜30代の若い世代ではTikTokからのEC、それより上の世代ではFacebookとShopeeやLazada、というのが現在の流れのようです。
ただし、インドネシアではTikTok Shopは現在サービス停止となっており、TikTokはTokopediaに出資して新会社を設立し、TikTok上に新たなEC機能を立ち上げる予定だというニュースもあり、今後の動向に注意が必要です。
2023年、SNSで話題になった物事は?
全世代でユーザー数が伸びてきたSNSですが、2023年、東南アジアでは主にどんなことがネット上で話題になっていたか各国スタッフに質問してみると、「政治や経済」という声がよく聞かれました。
インドネシアでは2024年2月に時期大統領選挙を控え、マレーシアでは2022年11月に新首相が決まったということで、政治的に大きな話題もありましたが、選挙の投票率も高い東南アジアでは、老若男女多くの国民が政治や経済に関心を持っているようです。
他の話題としては、インターネット広告やネット上の記事からバズったものもいくつか。
「タイでは、KFCの鶏皮チキンやバーガーキングのリアルチーズバーガーなど、飲食店の新商品が話題を呼んで、お店に行列を作っていました」(タイ/パー)
「人気CMの舞台裏を撮影した動画がネット上で話題になっていました」(ベトナム/ズン)
このようにネット上で「バズらせる」ことによって注目を集め、売上を伸ばすことに成功している企業も多かったようです。
今後、東南アジア市場に進出する場合には、このようにSNS上で話題を呼ぶコンテンツを発信していくことがポイントになっていきそうです。
まとめ
全世代で、インターネットでは情報を得るだけでなく、ショッピングも一般的になってきている東南アジア。
20〜30代の若い世代と、それより上の世代とで、メインとして使っているSNSやショッピングサイトも異なるため、デジタルマーケティングではターゲット層に合わせて媒体を使い分ける必要が出てきそうです。
また、特に若い世代では、ショッピングサイトだけでなく、TikTokなどの動画配信SNSを見ていて気になったものを効率的に買いたいという人が増えてきていることがうかがえます。ショート動画を中心にネット上で注目を集めた商品を求めて、実店舗に足を運ぶ人も多いため、今後は動画を使った販促戦略も工夫していく必要があるでしょう。
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