リピーターから初訪日まで、マレーシア人観光客のニーズを徹底調査!
リピーターも増えてきている訪日マレーシア人観光客。日本にはどんな体験を求めて訪れるのでしょうか? 現地スタッフにインタビューしました。

ここ数年増え続けている東南アジアからのインバウンドの中でも、マレーシア人観光客は2014年に約25万人だったところ、2019年には約50万人に到達し、5年で2倍の伸びを見せています。
マレーシアからの訪日客は、コロナ化前の2019年にはその9割が観光目的で日本を訪れていましたが、再び観光需要の戻ってきている2023年は、1〜5月までの間にすでに累計17万人を越えています(数字はJNTO/日本政府観光局調べ)。
マレーシア人観光客は、リピーターが多いというのが特徴となっています。国土交通省・観光庁「訪日外国人消費動向調査」の2019年データを見ると、訪日マレーシア人のうち2回以上訪れたことのある人は59.77%。6割の人がリピーターということになります。
では、リピーターも多いマレーシア人観光客は、日本にどのような体験を求めているのでしょうか? 現地スタッフのBai、Nurulに聞いてみました。
初訪日なら東京・大阪、リピーターは北海道や東北・北陸が人気

コロナ禍が落ち着き、マレーシアからの訪日観光客も戻ってきていますが、お2人の周りではどうですか?

訪日観光は盛り上がっていると思いますよ。マレーシアでは国内最大規模の旅行フェア「MATTA FAIR」が3月と9月に行われるのですが、今年の3月は日本のブースはかなり賑わっていて、行列を作っていましたよ。

日本のブースではどんな企業ブースが人気でしたか?

日本はJNTO(日本政府観光局)が中心となって、宿泊施設やバス会社、ツアー会社などが出展していました。JR西日本のブースでは大阪観光をしたいという人が具体的に相談しているなど、訪日を前提に具体的な情報を集めに行っている人が多く見受けられました。JRパスについて、値段や、どこで買えるかなどの質問をしている人もいました。


なるほど。移動手段についての情報は気になる人が多いのですね。マレーシアからの観光客はリピーターが半数以上というデータになっていますが、実際何度も日本に行きたいという人は多いですか?

そうですね、コロナ禍前には毎年行っているという人もいましたし、季節ごとに訪れたいという人も多いです。初めて行く人には東京や大阪が人気ですが、リピーターは北海道や東北、北陸などにも足を運んでいます。

雪を見たいという人が多いということでしょうか?

はい、雪や桜の景色は人気です。冬なら、白川郷、飛騨高山などに行く人も多いです。

12月はマレーシアのスクールホリデーなので、旅行しやすい時期なんです。中華系の人なら旧正月の時期も休みやすいですね。桜の季節に関しては、コロナ禍以降、学校の入学時期が1月から3月に変更になり、2023年もまだそのままになっているので、少し行きづらくなっています。

元に戻す予定にはなっていないんですか?

本当は2023年に元に戻す予定だったのですが、前年度のカリキュラムが終わらず、3月のままになっています。いつまで続くのかはまだわからない状態ですが、2024年以降は元に戻るかもしれません。

日本の観光業界にとっては影響も大きいので、動向を確認しておく必要がありそうですね。旅行のしかたとしては、団体旅行よりも個人旅行のほうが多いのでしょうか?

初めての人は団体で、リピーターは個人で行く人が多いと思います。

富裕層の場合は、東京や大阪の高級旅館に泊まり、アルファードに乗って観光したり、寝台列車に乗ったりと、いろいろなオプションのついたツアーも人気です。
旅のメインはマレー系ならテーマパーク、中華系なら日本食巡り

マレーシアのみなさんは、日本観光というとどんな体験を求めているのでしょうか。

マレーシアは多民族国家なので、民族によっても違うと思います。マレー系の人はムスリムで、人前で裸になるのに抵抗があるので温泉には興味がなく、テーマパークが中心になります。ディズニーランドをメインにしてお台場まで足を伸ばしたり、USJを楽しんだら京都を歩いてみたり、という感じですね。

お台場ならレインボーブリッジやガンダムの写真を撮ってInstagramに投稿している人もよく見ますね。日本は景色も街並みも独特なので、みんないろいろなところで写真を撮ってInstagramやFacebookにアップしています。

中華系の人なら、日本の食文化を楽しみに行く人や、日本酒や焼酎などを試したいという人も多いですよ。

ムスリムの方は、日本で食べ物で困ることはないのでしょうか?

最近はハラル(ムスリムが食べられるもの。豚やアルコールなどは禁止)のお店も増えてきていますので、探して行きますね。ハラルのラーメン店も増えていて、人気ですよ。魚だとお寿司は生魚が苦手な人が多いので、天ぷらのほうが人気ですね、築地の海鮮料理なども有名です。

ハラルのお店を探せるアプリやサイトがあるので、それで調べる人が多いです。FacebookのグループやInstagramでも情報収集できます。

最近ではハラルに対応した料理を出していることを示す「ハラル認証」マークのついたお店も増えていますね。
(※ハラル認証機関は、一般社団法人ハラル・ジャパン協会、宗教法人日本ムスリム協会、NPO法人日本ハラール協会など複数あり、それぞれ基準が設けられている)

情報はGoogleやSNSでさまざま集められるので、便利ではありますよ。

Instagramだと動画がメインで文字情報が少ないけれど、Facebookはテキストでも細かく説明している人が多いので役立ちますね。
食べ物のお土産はハラル認証があると安心

日本でのショッピングはどうでしょうか?

若い層だと、男性ならG-SHOCKの新しいモデルとか、女性なら化粧品を買う人をよく見ます。

中華系の若い女性には、マレーシアに入っていないハイブランドの商品が人気です。マレーシアには入ってきていない季節の新コレクションとかですね。シャネルやディオールのカフェに行って、写真をアップしている人も多いですよ。

ドラッグストアや家電量販店、ドン・キホーテにはみんなよく行きますよね。

24時間営業のドン・キホーテは便利ですよね。マレーシアのデパートは22時など遅くまで開いているところが多いですが、日本はだいたい20時閉店なので、観光してから行こうと思っても閉まっていて、だったらドン・キホーテに行こうとなります。

お土産として買うならどんなものが好まれますか?

僕の場合は浅草とか上野とか、地名が入ったキーホルダーを買うことが多いですし、喜ばれます。

そうですね、TOKYOと書いてあるマグネットやキーホルダーは定番です。マレーシアではハードロックカフェが人気で、店舗ごとに売られている「ASAKUSA」などの地名が入ったオリジナルグッズがほしいという人もいます。

地名がポイントになるんですね。お菓子など食べ物はどうですか?

チョコレートなどを買う人もいますが、マレー系にとってはハラルに対応しているかどうかがわかりにくいものがあるので、ちょっと不安です。原材料名が日本語で書いてあるので、アルコールなどが使われていないか確かめるのが難しいんですよ。原材料名が英語で書いてあるといいんですが……。せめて「NO PORK, NO LARD, NO ALCHOLE」と記載するとか。

お土産にもハラル認証マークがついているものなら安心して買えますね。

ドン・キホーテにもハラル専用コーナーがほしいです!
電化製品、移動手段……マレーシア観光客の「困った」体験は?

ハラルの他に、日本旅行で困ったことや不安なことはありますか?

日本の電化製品はボタンが多く、たとえばウォシュレットでもどれが何のボタンかわかりにくくて困ることがあるんです。ムスリムは用を足した後にホースで洗う習慣があり、日本のウォシュレットはすごくいいと言われていますが、ボタンがわからず、間違えて押して止められなかったりすることもあって、困ったという声はよく聞きます。

エアコンやテレビのボタンも多くて、日本語表記しかないので、英語表記をつけたり、案内があったりするといいですよね。それから、ホテルの部屋の広さも気になります。他国と比べて日本のホテルは狭いので、なるべく広いところを選びたいですね。家族など数人で旅行する人だと、Air B&Bで広い部屋を探す人も多いです。

テーマパークに行きたい人だと、日本のコンビニでしかチケット発券していないところもあって不便を感じることもあります。日本に来てから買うことになると、日にちが近くて買えなかったり、ウェブサイトも日本語のみでわからなかったり。ハードルが高いですね。

先ほど、JRパスが高くなったという話がありましたが、交通面で困ることはありませんか?

東南アジアでは配車サービスアプリのGrabやUberに慣れている人が多いのですが、日本では特に地方に行った際、駅から遠い場所を観光した後にタクシーもつかまらず、配車アプリもなく、困ったという話はよく聞きます。

バスが1時間に1本しかなかったり、その案内も日本語のみだったりして。

車が必要な地方ほど、アプリでの配車などができないのが不便に感じますね。

東南アジアからのインバウンドを狙う際には、改善点はまだまだありそうですね。
航空券の安さでは他国のほうが有利、でもハードルは高くない


韓国ですね。若い人を中心にK-POP人気が高いですし、韓国はハラルの情報も充実していて、航空券も安いんです。団体ツアーだとトルコのイスタンブールやモルジブも安いですし、イギリスなども。マレーシアはもともとイギリスの植民地だったこともあり、行きやすいんですよ。

Instagramにもよく韓国の写真は上がっていますね。

K-POPファンのヒジャブの女の子たちが現地のレストランなどで写真を撮っていれば、その店はハラル対応しているんだということがパッと見てわかりますよね。

ムスリム向けのPRではヒジャブの女性もモデルによく使われますよね。航空券が他国に比べて高いことは、日本にとってハードルになっていると思いますか?

マレーシア人にとって日本に来るハードルは、ビザもいらないですしそれほど高くはないんです。でも航空券の安さで言えばもっと安い国がいろいろありますよね。

2023年6月の発券分からは燃油サーチャージが安くなりますが、日本から帰るときの航空券が高いんですよ。それは、日本人がなかなか海外に出なくなっているからで、往復でフライトが埋まればもっと安くなるのに……と思います。

他国の観光PRで気になったものはありますか?

ゲームアプリに入っていた広告で、カンガルーが喋っているオーストラリア観光のPRがあったのですが、そういう国を象徴するような動物や食べ物がキャラクターとなって案内しているとわかりやすいですし、行ってみたいと思います。

なるほど、日本と言えばこれというものをアイコンにするとよさそうですね。たくさんのお話をありがとうございました!
まとめ
リピーターが増えていて、個人で旅行内容を決めることが多いマレーシア観光客は、ホテルの居心地や交通の利便性などは気になるポイントということがわかりました。
また、ムスリムが多いことから、ハラルなどムスリムの習慣に対応できる飲食店や施設、商品も、今後はますますニーズが高まっていくと思われます。
航空券が高くても行きたいと思える魅力的な観光地にするために、まだまだできることはありそうです。
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※本文内で引用されている資料・データ、登場する人物の所属名・役職名などは掲載当時のものです。