
こんにちは!クリスク・アジア編集部です。
訪日インバウンドの回復とともに、タイからの観光客も再び増えています。その一方で、「タイ人にどうやって日本の魅力を届けるべきか」と悩んでいる企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
特にここ数年で大きく変わったのが、情報収集の起点です。
かつてはGoogle Map検索や旅行サイトが中心でしたが、現在はその前提自体が揺らいでいます。タイでは、そもそも「調べる」という行為の前に、日常的に触れている情報の中から興味が生まれるケースが増えています。
その中心にあるのが、TikTokです。
この記事では、
- タイと日本で異なるTikTokの利用構造
- 訪日タイ人の約92%がTikTokを情報源としている実態
- 「見て決まる」旅行行動の変化
- なぜ今TikTokをやるべきなのか
を、現地視点とデータの両面から整理していきます。
タイと日本のTikTok差
まず最初に押さえておきたいのが、TikTokの「広がり方の違い」です。
本記事では、世代を以下のように整理します。
- Z世代:10代〜20代後半
- ミレニアル世代:30代〜40代前半
この区分で見ると、日本とタイではまったく異なる構造が見えてきます。
日本でも、TikTokは確実に広がってきています。10代では約60%、20代でも50%以上と、若年層を中心に利用が進んでいます。しかし一方で、30代になると利用率は約30%前後にとどまり、日常的に使う層と使わない層がはっきり分かれます。
つまり日本におけるTikTokは、影響力は強いものの、「若年層を中心に広がっている段階」にあります。
一方でタイは、この段階をすでに通過しています。
- Z世代:約70〜76%
- ミレニアル世代:約50〜66%
30代以降でも利用率が大きく落ちることはなく、日常的に使われています。この状態になると、「若者向けSNS」という認識はほとんど意味を持ちません。TikTokは特定の世代に閉じたサービスではなく、 生活者全体に広がったメディアとして機能しています。
この違いは単なる数字の差ではありません。マーケティングの前提そのものを変える違いです。日本では「どの世代に刺さるか」を考える必要がありますが、タイでは“幅広い層にどう見せるか”が問われるフェーズに入っています。

TikTokが情報収集の起点になる理由
こうした利用構造の違いは、そのまま情報収集の行動にも表れています。
クリスクタイによる調査では、訪日タイ人の約92%が旅行前の情報収集にTikTokを活用していることがわかりました。ただし、この数字は単に「利用している」という意味ではありません。より重要なのは、 どのタイミングで使われているかです。
日本では、「調べる」という行動が比較的明確です。旅行に行こうと思ったら、検索する。口コミを調べる。比較する。一方でタイでは、この流れが少し違います。必ずしも「調べよう」と思ってから行動が始まるわけではありません。
日常的にTikTokを見ている中で、たまたま流れてきた動画に触れる。その中で興味が生まれ、まず「ここへ行ってみたいかもしれない」と感じる。その後、必要に応じて調べる。つまり、調べてから興味を持つのではなく、興味を持ってから調べるという順番で行動が進むことが多いのです。
「見て決まる」という旅行行動
この違いは、意思決定のプロセスにも大きな影響を与えています。従来は、「比較して決める」ことが前提でした。しかし現在は、見ているうちに決まるという行動が増えています。
例えば、夜にスマートフォンでTikTokを眺めていると、日本の観光地やカフェの動画が流れてきます。
動画の中では、
- 実際の雰囲気
- 店内の空気感
- 食事のリアルな見た目
- その場所での過ごし方
が短時間で伝わります。
最初はただ見ているだけでも、関連する動画が続くことで、同じエリアの情報が頭の中に蓄積されていきます。そして気づいたときには、「なんとなくこのエリアが良さそう」「ここ行ってみたい」というイメージができあがっています。
この状態で検索や比較に入るため、最初から候補が絞られているのです。つまり、比較で選ばれる前に、候補に入るかどうかが決まっているという構造が生まれています。

動画が意思決定に強い理由
なぜこのような変化が起きているのでしょうか。その理由のひとつが、動画の情報量です。
写真や文章では伝わりにくい、
といった要素が、動画では自然に理解できます。ユーザーはその情報を見ながら、「自分がそこにいる状態」をイメージします。旅行は体験を伴う消費です。だからこそ、どれだけ具体的にイメージできるかが意思決定に大きく影響します。
TikTokは、この「イメージ形成」を最も効率よく行える媒体です。
なぜ今TikTokをやるべきか
ここまで読むと、「重要なのは理解できたが、本当に今取り組むべきか」と感じる方もいるかもしれません。
実際、日本企業の多くはすでにYouTubeやInstagramに取り組んでいます。一方でTikTokは、まだ優先度が低いケースも少なくありません。2025年時点では、TikTokをマーケティングに活用している企業は約37.5%というデータもあるように、まだ充分に取り組んでいるには至らないとも言えるのではないでしょうか。
この背景にあるのは、「TikTokは若年層向け」という固定観念です。
しかし、ここまで見てきた通り、タイではこの前提が成立しません。
- 30代・40代も日常的に利用
- 90%以上が情報収集に活用
つまり、TikTokは「一部に届く媒体」ではなく、最も接点を持ちやすい媒体のひとつになっています。

このタイミングで起きていること
現在のタイ市場では、少し特殊な状態が生まれています。ユーザーの行動はすでに変わっています。しかし企業側の発信は、まだ十分ではありません。このとき、何が起きるか。ユーザーはまずTikTokで情報に触れ、その中で印象をつくります。そしてその印象が、後の検索や比較に影響します。
一度も見たことがない場所は、思い出されにくい。逆に、何度か見た場所は、それだけで候補に入りやすくなるという訳です。
さらにTikTokには、「おすすめ」機能があります。フォロワー数ではなく、動画の反応によって拡散が決まる仕組みです。そのため、フォロワーが少ない状態でも、コンテンツ次第で一気に再生数が伸びることがあります。
この構造により、後発でも認知を獲得できる余地が残されているのです。
現在の状況は、
- (訪日外国人)ユーザーはすでにいる
- 行動も変わっている
- しかし発信はまだ少ない
という状態です。
言い換えると、需要はあるが供給が足りていない状態です。
まとめ
今回のポイントを整理します。
- タイではTikTokが全年代に浸透している
- 約92%が旅行前の情報収集に活用している
- 見ているうちに行き先が決まる行動が主流
- おすすめ機能により後発でも拡散のチャンスがある
インバウンド施策において重要なのは、魅力を持っているかどうかだけではありません。それが見つかる状態にあるかどうかです。
TikTokは、その「見つかる機会」をつくることができるチャネルです。そして今は、まだその席が埋まりきっていないタイミングです。だからこそ、今TikTokマーケティングに取り組むこと自体が、インバウンド獲得のチャンスになっています。
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