Webメディアと東南アジアSNSマーケティングの会社

MENU

CLOSE

リピーターに響く「訪日香港人向けマーケティング」のポイントは?

2023年には世界の中でも訪日客数が4位の香港。大半が訪日リピーターで、全国を巡る香港人観光客は、インバウンド集客を狙う地方自治体にとって最大のターゲットと言えます。どのようなマーケティングが効果的か、日本の自治体でインバウンド対策を手がけるケンさんに聞いてみました。

SNSでシェア/あとで読む
この記事のURLとタイトルをコピーする
リピーターに響く「訪日香港人向けマーケティング」のポイントは?
17:55

hongkong-inbound-promotion-20240207-01

活況を取り戻しつつあるインバウンド市場ですが、日本政府観光局(JNTO)の調査によると2023年の訪日外客数の中でも、韓国(約696万人)、台湾(約420万人)、中国(約243万人)に次いで4番目に多かったのが、香港(約211万人)です。

単月で見ると、2023年12月には過去最高となる約25万人が香港から訪日。香港―函館間の新規就航や香港―米子間の復便、香港―羽田間の増便といった背景もあり、2024年もさらに好調が続くと見られます。

インバウンド市場にも大きな影響を与える香港からの来日客に対して、今後マーケティングを強化していくには、どのようなことがポイントになるでしょうか。 今回は、鳥取県観光交流局で香港担当として勤務する許俊検さん(以下ケンさん)にお話を伺いました。

 

許俊検 様

許俊検 様
鳥取県国際万博課&香港駐在員

香港の大手旅行雑誌「長空出版 食玩買終極天書」で8年間ライターを務めた経験を活かし、大分県宇佐市の観光課のインバウンド事業に参画。去年香港に帰国し、鳥取県国際万博課の香港駐在員として訪日香港人向けインバウンドマーケティングの最前線に立つ。

 

地方自治体が抱えるインバウンド対策の課題とは?

クリスク
クリスク

まず、ケンさんの経歴を教えていただけますか。

許俊検 様
ケンさん

以前は香港で売上ナンバー1の旅行ガイドブック『長空食玩買終極天書』に8年務めていました。その後、コロナ禍では大分県の観光政策課に勤め、現在は鳥取県観光交流局の香港事務所に勤務しています。

クリスク
クリスク

もともと旅行に関わるお仕事をされていたんですね。

日本ではこれまで、大分県、鳥取県でインバウンド関連のお仕事をされてきたと思いますが、自治体がPRしたいものと、実際に香港人が求めているものとのギャップを感じることはありましたか?

許俊検 様
ケンさん

香港で出版社にいたときから問題点として感じていたのは、日本の自治体のPRでは博物館や公園などの公営施設のPRはしっかり行っていても、民間企業や店舗が運営するスポットの情報には弱いということです。

たとえば、旅行の際にとても重要視されるのが食べ物ですが、鳥取県だと鳥取和牛は名物として売り出したいのに、「どこのお店がいいか」とおすすめ情報は、行政としては公平性を期すためになかなか発信できていないんです。

クリスク
クリスク

どこかのお店に肩入れすることなく、紹介するなら一律にしなければいけないということですね。

許俊検 様
ケンさん

はい。鳥取和牛を食べられるお店の情報を発信するときも、すべて一律に紹介しなければならないため、情報収集するツーリストにとっては選択肢が多すぎて選べず、結局いい店に行けなかったという声もよく聞きます。

クリスク
クリスク

そうすると、行政が発信している情報よりも、民間が発信している情報を見るようになるということですね。

許俊検 様
ケンさん

そうです。Instagramで写真映えしているお店や、口コミサイトで評判のいいところなどから選んだほうがいいということになるんです。

クリスク
クリスク

他にも、行政がやるならもっとこうしたほうがいい、ということはありますか?

許俊検 様
ケンさん

香港では今、日本酒がブームになっています。

日本観光だけでなく、日本からの輸入への興味が高まっているのですが、香港で日本酒を味わって、興味を持ったことをきっかけに「日本に行ってみよう」と思わせるだけの誘致がまだできていないと感じます。

クリスク
クリスク

日本酒に絡めて、観光に来るともっとこんな体験ができますよといったPRをしたほうが効果的なのに、できていないということですね。

許俊検 様
ケンさん

輸入品からのインバウンド施策で言うなら、鳥取和牛は香港でもフェアをやっていたりするんです。ただ、そこには鳥取県の輸出入部門の担当者が関わっていて、観光局は関わっておらず、連携ができていないんです。

したがって、鳥取和牛をきっかけに観光客を増やすということには繋げられていません。これは鳥取県だけの問題ではなく、おそらく日本全国の各自治体で同じことが起こっていると思います。

クリスク
クリスク

なるほど、組織が縦割りで動くことによって大きな機会損失が起きているわけですね。

YouTubeチャンネルとのタイアップ広告が効果的

クリスク
クリスク

次は、これから香港人観光客に向けて対策をしていきたい企業に向けて、効果的なマーケティングの方法について教えていただきたいと思います。

まず、香港におけるプロモーションで有効なものとしては何があるでしょうか。

許俊検 様
ケンさん

やはり今はSNSが効果的だと思いますが、香港では最近までは30代後半以上の人はほとんどがFacebookユーザーでしたが最近は減りつつあり、30代前半以下の人はほとんどがInstagramユーザーとなります。

私の周りでも30代の人が「Facebookは広告ばかりが出てくるので使いたくない」と、離れている傾向にあります。

クリスク
クリスク

日本でも同様に、Facebookは若い世代ではあまり使われなくなり、中高年以上がメインユーザーとなってきています。

許俊検 様
ケンさん

Facebookでは企業アカウントが情報を投稿しても、有料広告としてブースト投稿にしないとほとんど広まらなくなっています。

今は企業の多くが、WebマーケティングではInstagramに力を入れている状況です。あとはYouTubeですね。

クリスク
クリスク

文字を読ませるよりも、写真や動画系のSNSのほうが人気が高まってきているということですね。人気YouTuberも多いのでしょうか?

許俊検 様
ケンさん

日本のYouTuberは個人で発信している人が多いですが、香港では5〜6人で事務所や会社のようなものをつくり、そこのチャンネルでいろいろなコンテンツを日替わりで配信運営するスタイルが大半です。

月曜はバラエティ番組、火曜は討論番組など、配信スケジュールが決まっていて、テレビ局のようなイメージですね。

クリスク
クリスク

面白いですね!その中に、旅行系の番組もあったりするのでしょうか。

許俊検 様
ケンさん

こうした人気YouTubeチャンネルを使って、観光動画を配信している日本の企業もありますよ。でも、観光情報番組ではタイや台湾のほうが多いですね。

日本はまだ、YouTubeがどれくらい効果があるのかイメージできず、進出してきていない印象です。

クリスク
クリスク

人気のチャンネルがひとつのテレビ局のような形になっているということは、普通のYouTuberにコラボを依頼するよりもやはり経費はかかってしまうのでしょうか。

許俊検 様
ケンさん

当然、普通のYouTuberよりも制作費をかけて動画を配信していますので、タイアップにもお金がかかります。ただ、芸能事務所やテレビ局に払う広告料として考えればYouTubeはまだ安いと思いますが。

各チャンネルに、専属契約している芸能人もいますし、その人たちがテレビ進出していくという流れも起きているくらい、YouTubeチャンネルは注目度が高いんです。

新しい映画やテレビ番組のプロモーションも、YouTubeチャンネルで配信されているのをよく見ますよ。

クリスク
クリスク

YouTubeでのプロモーション効果は、日本と比べるとかなり高いようですね。

リピーターすら知らないレアな地方旅を求める人も多数

クリスク
クリスク

訪日香港人観光客についても、特徴などを詳しくお聞きしたいと思います。まず、日本にどんなことを求めているのでしょうか。

許俊検 様
ケンさん

50歳以上の人だと、のんびり過ごせる観光地や自然の景色が見られる地方が人気で、高級感のある旅行を好みます。

若い人だと、ショッピングを楽しんだり、SNSで写真映えするスポットに行ったりすることが多いです。20〜30代だと東京ディズニーリゾートやUSJなどのテーマパークも人気ですね。

地域としては東京や大阪なども人気ですが、リピーターの場合は香港人があまり行っていない場所に行く人も多いです。

クリスク
クリスク

地方人気が高まっているということですね。

許俊検 様
ケンさん

最近よく聞くのは鹿児島県ですね。他には岐阜県や石川県、長野県などもよく耳にします。

今は原発の処理水を気にして太平洋側に行く人は減っていますが、日本海側を通って山形県、秋田県、青森県と旅行する人も増えています。リピーターは本当に全国いろいろなところに行っています。

ただ、一番多いのは香港から距離が近い九州ですね。熊本県までの直行便もあり、「くまモン」もよく知られていますよ。

クリスク
クリスク

訪日香港人はリピーターが多いと言われていますが、その理由についてどう考えていますか?

許俊検 様
ケンさん

「距離が近い」「安い」「きれい」が三大要素です。

香港人は海外旅行の回数が多いのですが、その中でも日本が多いのは、日本各地にLCCで行けることが大きいと思います。

クリスク
クリスク

他の国と比べて、日本の人気はどうなのでしょう

許俊検 様
ケンさん

ダントツで人気ナンバー1ですよ

特に今は円安もあり、日本に行けば同じものを香港の半額くらいで買えるケースも多く、普段買わないものも日本でたくさん買っておこうという人が増えています。

またLCCで必ずどこかには安く行けるので、安い航空チケットをまず押さえてから行き先や旅の内容を考えるという人が多いです。航空チケットをとって日程が決まったら、有給をとるという流れになります。

クリスク
クリスク

まずはチケット争奪戦に参加するところからスタートするわけですね。では、日本の情報はどのように集めているのですか?

許俊検 様
ケンさん

少し前までは旅行ガイドブックを読む人も多かったのですが、コロナ禍以降はSNSが大きく発展して、SNS上で情報収集する人が増えました。

日本の観光情報について、日本人だけでなく台湾人も発信する人が増えて、さまざまな情報が集められます。

クリスク
クリスク

ネット上での評価や口コミ情報も参考にしていますか?

許俊検 様
ケンさん

飲食店はGoogleの評価を見て選ぶ人が多いです。

以前は日本の「食べログ」を見る人が多かったのですが、中国語での情報量が足りないので、今は口コミはGoogleがメインですね。

香港国内の「オープンライス」という「食べログ」のようなサイトも、以前は香港国内の情報しかなかったところ、最近は日本の情報が掲載されるようになりました。

クリスク
クリスク

日本の飲食店情報も、ニーズが高まっていることが伺えますね。

今香港人にササるのは「日本酒」と「アニメ」

クリスク
クリスク

では次に、旅行中はどのように過ごしているのか、聞いていきたいと思います。

許俊検 様
ケンさん

東京あたりなら、レンタカーを借りて関東付近を2〜3日回ってから、次に都内を電車移動しながら観光するパターンが多いと思います。だいたい4〜5日程度滞在して帰国します。

リピーターだと、メジャーな観光地や都心の買い物スポットよりも、地元の人しか行かないような場所に行ってみたいという人や、予約制の体験スポットに行きたいという人が多いです。

クリスク
クリスク

どんな体験をしたいんですか?

許俊検 様
ケンさん

日本酒がブームなので、酒蔵巡りや飲み比べ体験が人気です。

最近は獺祭の蔵見学が注目されていて、山口県へ行く人も増えています。他に香港で有名なのはアサヒビールやサッポロビールの工場見学です。

男性ばかりの旅だと、日本の居酒屋も人気です。お酒以外では、温泉や着物を体験したいというニーズも高いです。

クリスク
クリスク

予約をしないと行けないような場所や、日本ならではの特別な体験に人気が集まっているということですね。買い物についてはどうでしょう。

許俊検 様
ケンさん

日用品やコスメをドラッグストアやドン・キホーテで買ったり、BEAMSなどのブランド品や靴を買ったり、あとはイヤホンやカメラなどの日本の電化製品も人気です。

今は円安なので、香港でも買えるものをより安く日本で買う人が増えています

クリスク
クリスク

体験では地方人気が高まっていると思いますが、買い物はやはり都心になりますよね。

許俊検 様
ケンさん

福岡なら天神、東京なら年齢や趣味によっても異なりますが渋谷や原宿、銀座、秋葉原という感じですね。

クリスク
クリスク

秋葉原は、アニメ系が好きな人が行くのでしょうか。

許俊検 様
ケンさん

そうですね。秋葉原でフィギュアを買いたいという人もいますし、日本のアニメファンは男女問わずいて、聖地巡礼をしたいという女性も多いです。

香港では『進撃の巨人』や『呪術廻戦』などがよく知られていて、展覧会が開かれたりもします。

最近だと『推しの子』が人気で、YOASOBIの主題歌の認知度も高いですよ。いずれにしても、目的に応じて、行く場所は異なります。

クリスク
クリスク

アニメをきっかけに日本に興味を持つ人も多いのでしょうか。

許俊検 様
ケンさん

若い世代では、多くがそうだと思います。『銀魂』や『るろうに剣心』、あとはゲームの『戦国無双』などは多くの若者が知っています。日本の伝統文化や歴史よりも、アニメなど現代の日本文化やグルメのほうに興味を持っている人のほうが多いですね。

クリスク
クリスク

そう聞くと、アニメ系のコンテンツもプロモーションで活用できる気がします。

地方の特産物にも興味アリの香港人を狙うなら、言語対応や交通標示を急ごう

クリスク
クリスク

日本旅行で人気のお土産についても聞かせてください。

許俊検 様
ケンさん

「東京ばな奈」はYouTubeやガイドブックでもよく紹介されていて昔から人気です。

ここ数年注目が集まっているのは「東京ミルクチーズ工場」のお菓子で、香港にも進出しています。香港にショップを出していたり、ショッピングモールで期間限定販売されたりしたお菓子は、「これ見たことある」と買っていく人が多いです。

クリスク
クリスク

地方を訪れた人だとどんなものを買うのでしょう。今ケンさんがいらっしゃる鳥取ではどうですか?

許俊検 様
ケンさん

鳥取なら「焼かにせんべい」や二十世紀梨などを、スーパーで買っていったりします。大分では温泉体験をしたい人が多かったのであまりお土産のイメージがありませんが、買うなら「かぼす」ですね。

クリスク
クリスク

日本人と同じように、その地方の特産物を買っていくんですね。香港の人が日本で買い物をする場合には、支払いはどうしていますか。

許俊検 様
ケンさん

日本旅行の場合は、ほぼ現金を両替して持っていきます。帰国時に余らせると換金の際にレート差で損するので、日本で使い切る人がほとんどです。

クリスク
クリスク

キャッシュレス決済よりも現金なのですか?

許俊検 様
ケンさん

香港の場合は、ほとんどの人が交通機関もショッピングもオクトパスカードというICカードで支払っていますが、日本では使えるお店がほぼありませんよね。たいていの香港人は来日前に両替を済ませることもあり、基本は現金払いですね。

中国によく行く人であれば、AlipayやWeChat Payを使うこともあります。

クリスク
クリスク

日本旅行で、香港の人が困ることは何でしょう。もっとこうすればいいのにと思うことはありますか?

許俊検 様
ケンさん

言語問題が大きいです。特に地方の飲食店では写真も英語表記もないメニューが多く、注文ができません

交通手段にしても、電車の時刻表がわかりにくかったり、ネットに情報がないバス路線があったり、困るケースは多いと思います。

レンタカーを使わずに地方の景色を見に行きたい場合、バスの本数が少ないこともネックになります。

クリスク
クリスク

言語と交通が、大きなハードルになっていると。これはまだ改善の余地があるのではないかと思います。ありがとうございました!

まとめ

海外旅行先としてはダントツ人気が日本という香港。訪日リピーターも多く、全国各地を回る人が増加する中で、インバウンドを狙いたい地方は今後しっかり意識していく必要がありそうです。

香港人インバウンドを呼び込むプロモーション施策としては、InstagramやYouTubeを積極的に活用するとよさそうですが、呼び込んだ後、満足度を高めるための対策もしっかり行いたいところです。言語対応やわかりやすい交通標示は、喫緊の課題と言えるでしょう。

クリスクでは、現地スタッフによる各国の調査を踏まえたWebマーケティングをご提案しています。もしSNS運用やWeb広告運用の案件があれば、お気軽にお声がけください!

※本文内で引用されている資料・データ、登場する人物の所属名・役職名などは掲載当時のものです。

東南アジアにおけるSNSを活用したマーケティングをサポートします。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ
SNSでシェア
この記事のURLとタイトルをコピーする

この記事を書いたのは

東南アジア・東アジアのマーケティングに携わり12年!
タイから始まりベトナム・マレーシア・インドネシアにもオフィスを構え、現地メンバーと日本のディレクターチームとで東南アジア・東アジアでの集客・プロモーションを支援しています。

こんな記事も読まれています

Contact Usお問い合わせ

どうぞお気軽に、ご質問・ご相談をお寄せください。

株式会社クリスク
  • Clisk Japan

    東京都品川区東五反田5-22-37

  • Clisk Thailand

    689 Bhiraj Tower at Emquartier, Unit No.1602, 16Floor Sukhumvit Road, North Klongton, Vadhana, Bangkok 10110
    TEL +66-(0)2-060-6977

  • Clisk Vietnam

    Tầng 10, FiveStar Tower, 28Bis Mạc Đĩnh Chi, P. Đa Kao, Quận 1, Ho Chi Minh city, Vietnam

  • Clisk Malaysia

    A-15-9 Liberty Arc @Ampang Ukay, Jln Ulu Kelang, 68000 Ampang, Selangor, Malaysia

  • Clisk Indonesia

    Kantorkuu Citywalk Sudirman Jl. K.H. Mas Mansyur No.121 Level 2, RT.10/RW.11, Jakarta 10220