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マレーシア人のインバウンド誘致に必要なことは?日本人気と「言葉の壁」から考える受け入れ策【訪日外国人分析】

マレーシア人にとって日本は、海外旅行先として高い関心を集める国です。一方、当社調査ではマレー系・中華系の回答者の半数超がコミュニケーションの壁を挙げました。タイの受け入れ事例も参考に、言葉の不安を減らし、日本の魅力を楽しんでもらうインバウンド施策を考えます。

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マレーシア人のインバウンド誘致に必要なことは?日本人気と「言葉の壁」から考える受け入れ策【訪日外国人分析】
17:18

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こんにちは、クリスクアジア編集部です。

旅の計画を立てるとき、行き先を決める理由は人それぞれです。日本食を食べてみたい。雪景色を見たい。アニメや伝統文化に触れたい。地方の温泉でゆっくりしたい。マレーシアの人たちにとって、日本はこうした期待を一つの旅でかなえてくれる国として、長く関心を集めてきました。

一方で、いざ旅の情報を調べ始めると、別の疑問も浮かびます。駅の案内は読めるだろうか。飲食店で注文できるだろうか。予定が変わったとき、誰に相談すればよいのだろうか。憧れの旅行先だからこそ、旅先で困らないかという不安も、出発前に確かめたくなるものです。

クリスクアジアが実施した訪日旅行に関するアンケートでは、日本の社会や文化について尋ねた設問で、マレー系の回答者の53.3%、中華系の回答者の57.1%が「英語が通じない・コミュニケーションの壁」を挙げました。
数字だけを見ると、日本の受け入れに課題があるように感じられるかもしれません。しかし、この結果は「日本へ行きたくない」という意味ではありません。むしろ、行きたい場所としての魅力があるからこそ、旅の途中で感じる不便を減らせば、楽しめる体験はもっと広がるはずです。

今回は、マレーシア人の訪日意向の高さを示す調査と、当社アンケートの結果を見ながら、言葉の壁の正体を考えます。さらに、マレーシアから多くの旅行者を迎えているタイの事例を手がかりに、日本の地域や観光事業者が取り入れられる工夫を探ります。

 日本は「行きたい国」の筆頭

日本への関心を示すデータとして、GMOリサーチが2022年に発表したアジア10カ国・地域の海外旅行意識調査があります。日本を除く9カ国・地域で「近い将来もっとも行きたい国」を尋ねたところ、日本がいずれも1位となりました。調査時点で、日本はマレーシアを含むアジアの人々にとって、次の海外旅行先として強く意識されていたことがうかがえます。

もちろん、2022年の調査結果をそのまま現在の旅行意向として扱うことはできません。また、調査全体での順位と、マレーシアだけの割合は別のデータです。それでも、「日本に行ってみたい」という大きな期待がアジア各国に広がっていたこと、そしてその調査対象にマレーシアが含まれていたことは、日本のインバウンドにとって前向きな材料です。

同調査全体では、日本で体験したいこととして、日本食、自然や景勝地、桜・紅葉・雪など四季を感じる体験が上位に並びました。これはマレーシア回答者だけの結果ではありませんが、日本を訪れる魅力が、一つの観光名所だけではなく、食、自然、季節、文化といった幅広い体験に支えられていることを示しています。大都市をめぐる旅だけでなく、地方の景色や地域ならではの体験にも、選ばれる余地があります。

日本には、すでに人を引きつける理由があります。だからこそ、次に考えたいのは「興味を持ってもらえるか」だけではありません。関心を持った人が、実際に旅行を計画し、現地で迷わず動き、帰国後に「また来たい」と思えるところまで、どんな情報と体験を用意できるかです。

 旅の期待に忍び込む小さな不安

行きたい場所が決まっても、旅の計画には細かな確認がつきものです。駅を降りてから目的地までどう行くのか。バスはどこから乗るのか。店では先に注文するのか、席で待つのか。支払いにカードを使えるのか。ひとつずつは小さなことでも、知らない場所で何度も判断を迫られると、旅行者は疲れてしまいます。

今回のアンケートで、マレー系の回答者15名のうち53.3%、中華系の回答者7名のうち57.1%が挙げたのは、「英語が通じない・コミュニケーションの壁」でした。ここで大切なのは、この回答を「日本人は英語が話せない」という評価だけに閉じ込めないことです。旅行者が困るのは、会話の流暢さだけではありません。必要な案内を見つけられない、質問してよい相手が分からない、返事を聞いても次の行動が判断できない。そうした場面が重なったとき、「コミュニケーションが難しい」という感覚になります。

たとえば、地方の駅に到着した旅行者が、目的の観光施設へ向かうバスを探しているとします。時刻表が日本語だけで、乗り場の番号も地図上の位置も分かりにくい。運転手に尋ねようとしても、どこまで英語が通じるか分からない。そんなとき、旅行者は「このバスで合っているか」を聞く前に、尋ねること自体をためらうかもしれません。

そこで必要になるのは、完璧な英会話力だけではありません。乗り場を示す地図、目的地の写真、乗車方法を説明する短い文章、スマートフォンで読める多言語ページ。ひとつの会話に頼らず、いくつかの手段で同じ情報にたどり着けるようにしておくことが、旅の不安を小さくします。

当社アンケートの回答者数は限られておりますので、マレーシア人全体の意見として一般化することはできません。それでも、旅行者がどこで戸惑う可能性があるのかを考えるきっかけとしては、現場に活かせる声です。少数の人の困りごとでも、案内を改善すれば、同じ場所を訪れる多くの人にとって分かりやすい環境になります。

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 英語だけに頼らない伝え方

「英語が通じにくい」と聞くと、すべての案内を英語に翻訳しなければならないと思うかもしれません。もちろん英語は重要な共通言語のひとつですが、翻訳だけで旅の不安がすべてなくなるわけではありません。長い説明文を訳しても、知りたい情報が見つけにくければ、旅行者は動けないままです。

まず考えたいのは、旅行者が何をしようとしているときに情報を必要とするかです。電車に乗る、食事を注文する、入場券を買う、支払いをする、困りごとを相談する。こうした具体的な行動に沿って案内を組み立てると、翻訳する内容にも優先順位がつきます。

たとえば交通案内なら、駅名だけではなく、乗り場までの道順、運賃、所要時間、降車後の徒歩ルートを一続きで示します。飲食店なら、注文方法、支払いのタイミング、店内でのルールを短く伝えます。観光施設なら、予約が必要か、休館日はいつか、受付で何を提示すればよいかを明記します。文字情報に写真やピクトグラムを添えれば、言語の違いを越えて伝わりやすくなります。

また、訪日客が使う言語は一つではありません。マレーシアは多民族・多言語の社会であり、旅行者が使いやすい言語も人によって異なります。英語、マレー語、中国語などを必要に応じて選べるようにしつつ、特定の民族や名前だけを手がかりに言語を決めつけない配慮も必要です。選択肢を見せて、本人が使いやすいものを選べるようにすることが、自然なコミュニケーションにつながります。

現場のスタッフにとっても、外国語対応を「話せる人だけの仕事」にしない工夫が大切です。指差しで選べるメニュー、翻訳アプリを使うための短い案内、筆談用の紙、困ったときに引き継げる担当者。こうした準備があれば、流暢な会話ができなくても、旅行者を置き去りにせずに済みます。言葉の壁をなくすというより、壁の前で立ち止まらなくてよい仕組みをつくるのです。

 タイの受け入れから学べること

マレーシア人旅行者の受け入れを考えるとき、隣国タイの取り組みは参考になります。タイ政府の公表によると、2024年にタイを訪れたマレーシア人旅行者は約495万人で、国籍別の上位市場の一つでした。国境を越えた短期旅行や南部への周遊など、両国の近さを活かした人の往来が活発です。

タイが提供しているのは、観光名所の宣伝だけではありません。タイ政府広報局が紹介する「Muslim Friendly & Gastronomy Tourism Routes」は、マレーシアやシンガポールなどとつながる南部14県を対象に、ムスリム向けの観光ルート、飲食店、訪問先などを案内するガイドブックです。タイ語版と英語版が用意され、旅行者が事前に行き先を組み立てるための情報をまとめています。主要な観光都市では、ハラル対応のホテルやレストランなどのサービスも提供されていると説明されています。

もうひとつ、旅先で「何かあったときに頼れる場所」を用意することも重要です。2025年、マレーシア国営通信社Bernamaは、タイ南部を管轄する第7地域の観光警察が、24時間対応の1155番ホットラインをマレー語、中国語、タミル語、アラビア語、英語、ロシア語、タイ語の7言語で提供していると報じました。遺失物、事故、軽犯罪、観光客を狙った詐欺などの相談を受け付け、旅行者が多い地域では警察官を主要地点に配置する取り組みも紹介されています。

ここで注意したいのは、これらの例をタイ全土のどこでも同じように利用できると捉えないことです。ガイドブックは南部14県を中心とした企画であり、ホットラインの多言語対応も報道時点での南部第7地域の情報です。タイの仕組みをそのまま日本に移せばよい、という話でもありません。

それでも、見習える考え方はあります。旅行者の文化や食のニーズを想定して行き先情報をまとめること。困ったときの窓口を、旅の前から分かるようにすること。必要な場所に言語や人のサポートを配置すること。観光の魅力を見せるだけでなく、安心して楽しむための道筋まで用意している点です。

 日本の魅力を楽しみ切るために

日本の観光地や事業者がマレーシア人旅行者に向けてできることは、特別な大規模施策ばかりではありません。観光協会のウェブサイトに、最寄り駅からの行き方と乗り換えをまとめる。飲食店のページに、注文の流れや決済方法を写真付きで載せる。施設の入口に、予約の要否や利用ルールを多言語と図で案内する。困ったときの問い合わせ先を、旅行前に見つけやすい場所に置く。ひとつずつは地道でも、旅の途中で「これなら分かる」と思える場面を増やせます。

情報を置いたら終わりではありません。旅行者がどのページを見ているか、どこから問い合わせが来るか、現場でどの説明に時間がかかるかを見れば、次に直すべき場所が見えてきます。たとえば「駅からの行き方」が何度も尋ねられるなら、地図や動画を追加する。注文方法が伝わりにくいなら、メニューの見せ方を変える。旅の感想やスタッフの声を取り込みながら、小さく試して改善していく方法が現実的です。

SNSの発信にも同じ視点を持ち込めます。美しい景色の写真に「どこで撮れるか」「駅からどう行くか」「どの季節に楽しめるか」を添える。食の紹介に、店の注文方法や予約の有無を加える。短い動画で、施設に着いてから体験が始まるまでを見せる。旅行者は訪問後のイメージを持ちやすくなり、行ってみたいという気持ちを具体的な計画へ移しやすくなります。

ここで忘れたくないのは、言語対応が目的そのものではないことです。案内を多言語にするのも、問い合わせ先を設けるのも、旅行者に日本の魅力を十分に味わってもらうためです。情報が分かることで、旅行者は一つ先の駅まで足を延ばせるかもしれません。地元の店に入ってみるかもしれません。予約が必要な体験に申し込めるかもしれません。安心は、行動の選択肢を広げます。

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 壁を越えれば、可能性が広がる

マレー系・中華系の回答者の半数超がコミュニケーションの壁を挙げたという結果は、受け入れ側にとって耳の痛い指摘かもしれません。しかし、それを「日本は不便だ」という結論だけで終わらせる必要はありません。どの場面で言葉が必要なのか、情報をどこに置けば見つかるのか、困ったときに誰につなげばよいのか。問いを具体化すれば、改善策も見えてきます。

そして、もう一つ見落としたくない事実があります。日本は、マレーシアを含むアジアの人々の「行きたい国」として首位に選ばれた調査があります。これは2022年の結果であり、現在の意向をそのまま表す数字ではありません。それでも、日本が選ばれるだけの魅力を持っていることを示す材料です。その時点で確認された訪日意向と、今回のコミュニケーションに関する回答を合わせて考えれば、日本はマレーシア人旅行者を誘致するポテンシャルが高いと言えます。課題は日本の魅力がないことではなく、訪れたいと思った人がその魅力を楽しみ切れる環境を整えられるかどうかです。

マレーシア人旅行者に「日本は行ってみたい国」から「また訪れたい国」へと感じてもらうには、旅前の情報発信と、旅中の受け入れを切れ目なくつなぐことが欠かせません。行き先の魅力を伝え、迷ったときの道を示し、現地で気軽に頼れる手段を用意する。その積み重ねが、期待を満足に変えていきます。

日本には、まだ多くの人に知ってもらえる地域や体験があります。言葉の壁を理由に可能性を小さく見るのではなく、伝え方と受け入れ方を整えることで、マレーシア人旅行者に選ばれる余地は大きく広がっていくはずです。

まとめ

マレーシア人にとって日本は、調査でも「行きたい国」として高い関心を集めてきました。一方、クリスクアジアの独自アンケートではマレー系・中華系の回答者の半数超がコミュニケーションの壁を挙げています。これは日本への関心を否定する声というより、旅の途中にある不安を減らす余地を示すものです。

タイの南部では、ムスリム向け観光ルートや、マレー語を含む観光警察の相談窓口など、旅行者の背景や困りごとに合わせた受け入れの事例があります。日本でも、多言語案内、写真や地図、QRコード、相談先の表示を組み合わせれば、流暢な外国語に頼りきらずに安心をつくれます。日本の魅力を伝える発信と、現地で楽しみ切るための案内を一緒に整えることが、マレーシア人旅行者の誘致につながります。

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※本文内で引用されている資料・データ、登場する人物の所属名・役職名などは掲載当時のものです。

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この記事を書いたのは

東南アジア・東アジアのマーケティングに携わり15年!
タイから始まりベトナム・マレーシア・インドネシアにもオフィスを構え、現地メンバーと日本のディレクターチームとで東南アジア・東アジアでの集客・プロモーションを支援しています。

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