今、東南アジアでは、ECとライブ動画が融合した「ライブコマース」がかつてないほどの盛り上がりを見せています。さらに、TikTok Shopは2025年6月に日本でリリースされるという報道もあり、今後は日本でもますます注目が集まると考えられています。
今回は、クリスクの現地スタッフがマレーシアで実際に体験した TikTok Shop・Shopee Live・Lazada Liveの最前線をレポートしながら、それぞれの特徴や成功のポイント、日本企業が参入する際のヒントについてまとめました。
体験日:2025年3月27日(ラマダン期間中/ハリラヤ直前)
イスラム圏最大級の祝日「ハリラヤ」を3日後に控えたこの日は、マレーシアのEC業界全体がセールとライブ配信で大いに盛り上がりました。
TikTok Shop・Shopee Live・Lazada Liveでは、大小さまざまなショップやライバーが次々と登場し、視聴者の熱気は想像以上。地元のパン屋さんが生地をこねて焼き上げる様子を配信したり、大手ブランドがスタッフを入れ替えながら24時間ライブで商品紹介を行ったりと、多様なスタイルが展開されていました。
現地でライブコマースに触れる中で、支持される6つの理由が見えてきました。
大手ブランドは交代制で絶えず配信。常に誰かがライブをしている状態が続いており、活気に満ちています。
「商品の素材は?」「配送方法は?」といった質問がリアルタイムで飛び交い、ライバーがその場で丁寧に回答。疑問点をその場で解消できる安心感が人気です。
人気ライバーの実演だけでなく、パンやクッキーの仕込みをライブで見せる配信も多く、ショッピング+エンタメとして楽しむ視聴者も増えています。
ローカルの個人店舗から大手ブランドまで幅広いセラーが参加しているため、さまざまな商品やサービスに出会えるのも魅力です。
「今購入したらハリラヤに間に合いますか?」「発送中に壊れない?」といった真剣な質問から、ときには「お兄さんイケメンだね」といったジョークまで飛び交い、コミュニティのような盛り上がりを見せています。
配信中に梱包や休憩中の様子を見せるカジュアルなライブも多く、セラーと視聴者の距離感がぐっと縮まっています。
「このエリアなら店舗から近いのでお届けが早い」「(クッキーのような壊れやすい商品は)郵送だと割れるかもしれないが、ピックアップなら割れずに持って帰れる」など、リアルタイムで正直に伝える説明も信頼につながっています。
東南アジアのライブコマースを牽引する主要プラットフォーム、TikTok Shop、Shopee Live、Lazada Liveにはそれぞれ異なる特徴があります。自社に最適なプラットフォーム選びは、成功の鍵となります。
FYP(For You Page)がユーザーの興味関心に直結するため、関連性の高いライブが次々とリコメンドされます。
エンタメ性が高く、視聴者が動画を楽しみながら商品を購入できるスムーズな導線が強みです。
サービス対象国からは比較的簡単にセラーになれますが、レビューや販売実績が少ない新規セラーはユーザーに選ばれにくい傾向にあります。
ユーザーは購入前にアカウントの信頼性や商品のレビューを厳しくチェックするため、日本企業が「とりあえず」で開設したアカウントでは成果を出すのは難しいかもしれません。
割引、クーポン、コイン付与など、お得感が最大の魅力。価格に敏感なユーザーが多く集まります。
安価な商品が多い反面、低品質な商品も混在するため、ユーザーはセラー情報を非常に厳しくチェックします。
信頼できるセラーを見分ける指標として、「Gold Class」や「Influencer」といったタグが参考にされます。
公式ブランドや大手企業の配信が多く、プラットフォーム全体の信頼性が高いのが特徴です。
Shopeeほど大幅な値引きは少なく、プロモーションよりもブランドの信頼性や価値を伝えることに重点が置かれます。
中華系のセラーが多く、中国語での配信が中心のため、中華圏のターゲット層を持つ商品との相性が良いと考えられます。
安売りや大型バウチャーの提供が少ないため、ShopeeやTikTokと比較すると現時点ではやや盛り上がりに欠ける印象があります。
タブは「Following(フォロー中のアカウント)」「Explore(注目のライブ)」「KOL Pick’s(KOLのおすすめ)」が基本ですが、セール時には限定タブが追加されます。
ライブコマースで購買を検討するユーザーは、以下のような慎重かつ合理的な行動をとります。
サイズ感、配送日、破損リスク、在庫状況など、気になる点はリアルタイムコメントで詳細に質問します。
購入前にレビュー数と評価を必ず確認し、商品の品質やセラーの信頼性を確認します。
購入実績が少ないセラーや、レビューが少ないセラーからの購入は避けられる傾向にあります。
各ライブコマースプラットフォームは、ユーザー層や特性などにおいて大きく異なります。
TikTok Shop、Shopee Live、Lazada Liveの3サービスの特徴を以下にまとめました。
項目 | TikTok Shop | Shopee Live | Lazada Live |
月間ユーザー規模 | 2,868万 (TikTokユーザー数) |
約5,858万訪問 | 約1,896万訪問 |
主な魅力 | エンタメ性・関連性の高いFYP | 圧倒的ディスカウント | 信頼性 |
プロモーション | ライブ限定割引多数 | 大型クーポン・まとめ買い | 割引は控えめ |
主な言語・属性 | マレー語・中国語 比較的年齢層が若い |
マレー語中心 価格重視 |
中国語中心 中華系中心 |
ライブコマースを効果的に活用するには、各プラットフォームの特性を理解し、最適化された戦略を実行することが重要です。
ショート動画広告で興味を引きつけ、ライブ配信へ誘導する流れが効果的。
エンゲージメントを最大化できますが、新規アカウントの信頼性構築が最初のハードルとなります。
もし新規参入するなら、「日本発!今月オープンの注目ブランド」など、新規参入であることを明確に伝える訴求が必要かもしれません。
ハリラヤや独身の日といった大型セールイベントに合わせ、大胆なクーポンやバンドル販売と連動させることで、売上を伸ばせます。
Shopee Liveは商品数が非常に多いため価格競争に巻き込まれやすく、差別化には工夫が必要です。
ブランドストーリーや製品のこだわりを丁寧に伝えるのに適しています。
信頼性を活かした高単価商品の販売に繋げやすいですが、ShopeeやTikTokほどの即時的な集客力は期待しにくいかもしれません。
東南アジアのライブコマースは、単なるトレンドを超えた大きな可能性を秘めています。現地のユーザーが重視するのは「信頼」と「体験」。レビューや実績を地道に積み上げることが、無名ブランドにも大きなチャンスをもたらします。
一方で、プラットフォームごとの違いを正しく理解し、現地ユーザーのインサイトに寄り添った運用が求められます。自社でゼロから信頼を構築し、現地流を理解して売上につなげるには“奥深さ”と“乗り越えるべきハードル”が存在するのも事実です。
東南アジア市場でライブコマース展開を本格的にお考えの方は、ぜひ最新情報や実践ノウハウをチェックしてみてください。
近日公開予定のホワイトペーパーでは、主要セール時期やTikTok Shopの成功戦略を詳しくご紹介します。
公開次第、本記事でもご案内しますのでお楽しみに!
クリスクでは、東南アジアのデジタルマーケティングに豊富な実績があります。具体的な戦略立案や現地最新トレンドを踏まえたご提案も可能ですので、ご相談はお気軽にどうぞ。