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訪日タイ人約58%が答えた日本のゴミ箱問題と魅力を引き出すUX改善【訪日外国人分析】

作成者: クリスクアジア海外事業部|2026/06/03 3:00:00

こんにちは!クリスク・アジア編集部です。
訪日外国人観光客が増加する中で、「日本は清潔で快適」という評価がある一方で、意外な課題として挙がるのが「ゴミ箱が見つからない」という声です。

今回の記事では、クリスクタイによる独自調査をもとに、観光地における“ゴミ箱問題”の実態と、その背景、そして現実的な解決策について掘り下げていきます。

この記事を読めば
・訪日観光客がどこでストレスを感じているのか
・日本の魅力と課題を構造的に理解できる
・すぐに実行できる観光UX改善のヒント

がわかります。

今回の調査では、訪日タイ人の約58%が「ゴミ箱が見つからない」と回答しており、これは観光体験における見過ごせない課題です。本記事では、こうした生の声をもとに、現場視点での改善策をご紹介します。

 約6割がゴミ箱不足に困る     

クリスクタイによる独自調査では、訪日タイ人の約58%が「日本でゴミ箱が見つからないことに困った」と回答しています。

日本は「清潔な国」という評価が高く、街中にゴミが落ちていない光景は多くの外国人にとってポジティブな印象を与えています。一方で、「ではどこに捨てればいいのか」という疑問に直面するケースも少なくありません。特に東南アジアでは、公共空間にゴミ箱が設置されていることが一般的です。そのため、「ゴミ箱はすぐ見つかるもの」という前提とのギャップが、日本での違和感につながっています。

観光庁の調査でも、訪日外国人の21.9%が「ゴミ箱の少なさ」に困ったと回答しており、旅行中の不満として最も多い項目となっています。これは単なる不便ではなく、観光体験全体に影響する構造的な問題です。ゴミを持ち歩くストレスは、回遊性や購買行動にも影響します。   

 

 日本でゴミ箱が少ない理由      

日本で街中のゴミ箱が少ない背景には、歴史的・制度的な理由があります。

大きな転機となったのは1995年の地下鉄サリン事件です。この事件以降、爆発物などの危険物が隠されるリスクを避けるため、駅や公共空間からゴミ箱が撤去される流れが進みました。現在でもテロ対策の観点から、公共ゴミ箱の設置には慎重な姿勢が続いています。

また、ゴミ箱の維持には回収・分別・清掃といった運用コストが発生します。特に都市部では人の流動が多く、設置数が増えるほど管理負担も大きくなります。そのため、行政としても無制限に設置することは現実的ではありません。

さらに、日本ではポイ捨て防止の観点から、「ゴミは持ち帰る」という文化が浸透しています。あえてゴミ箱を増やさないことで、ゴミの集中や環境悪化を防ぐという考え方も存在します。加えて近年では、渋谷区のように事業者に環境美化の責任を求める動きも強まっています。2026年3月の条例改正では、来街者によるゴミの発生に対し、事業者側が主体的に対応することがより明確化されました。

これは、「公共が一括で管理する」から「発生源に近い場所で管理する」へと、都市のゴミ処理の考え方が変化していることを示しています。  

 ゴミ箱があるのに使えない      

日本では「ゴミ箱がまったく存在しない」というわけではありません。実際には、コンビニや駅、商業施設の中など、さまざまな場所に設置されています。しかし、訪日観光客の視点に立つと、それらは必ずしも「使えるゴミ箱」ではありません。

たとえばコンビニのゴミ箱は、本来は店内で購入した商品の廃棄を前提として設置されています。そのため、外で購入した飲食物のゴミを捨てることに対して遠慮が生まれたり、「使っていいのか分からない」という心理的なハードルが発生します。店舗によっては利用制限があるケースもあり、ルールの不透明さが利用をさらに難しくしています。

また、商業施設や駅構内のゴミ箱も、施設利用者を前提としている場合が多く、観光客が気軽に立ち寄って使える導線にはなっていません。「見えているのに使いづらい」という状況が発生しています。

さらに、日本特有の細かな分別ルールも大きな障壁となります。「燃えるゴミ」「プラスチック」「缶・ペットボトル」といった分類は、日本人にとっては日常的でも、短期滞在の観光客にとっては直感的に理解しにくいものです。誤って捨ててしまうことへの不安から、利用そのものを避けてしまうケースも少なくありません。このように、日本のゴミ箱は「存在しているかどうか」ではなく、安心して使えるかどうかが重要になります。

つまり、日本のゴミ箱問題は単なる数の不足ではなく、利用条件の不透明さ・分別ルールの難しさ・心理的ハードルといった複数の要因が重なって生まれています。この「あるのに使えない」という状態は、観光客にとっては“存在しないのと同じ”体験につながります。そしてこのギャップこそが、日本のゴミ箱問題の本質といえるでしょう。     

 

 見えないインフラ問題     

もうひとつ見逃せないのが、「情報としての欠如」です。実際にはゴミ箱が存在していても、その場所を事前に知る手段がほとんどないため、観光客は現地で探すしかありません。結果として、「ゴミ箱がない」という認識につながっています。現代の旅行者は、移動・食事・観光のほとんどをスマートフォンに依存しています。Google Mapで「レストラン」や「トイレ」は探せるのに、使用できる「ゴミ箱」を探すことはできません。

現状では、ゴミ箱の位置情報はほとんど可視化されておらず、観光アプリでも網羅的に整備されているとは言えません。つまり、存在していても“情報として存在していない”状態です。特に訪日観光客は土地勘がないため、「探せば見つかる」ではなく「最初から分かる」ことが重要です。この視点で見ると、日本のゴミ箱は物理インフラとしては存在していても、UX(ユーザー体験)としては未整備のインフラといえます。

さらに、日本特有の「分散型管理」もこの問題を複雑にしています。ゴミ箱は行政が一元管理しているわけではなく、コンビニや施設など事業者ごとに管理されています。そのため、情報が統一されず、データとして集約されにくい構造になっています。

結果として、「どこにあるか分からない」「使えるか分からない」「探すのに時間がかかる」という三重のストレスが発生します。本来、ゴミ箱は「意識せずに使えるインフラ」であるべきです。しかし現在の日本では、観光客にとって「探さなければならない対象」になっています。このギャップを埋めるためには、単なる設置ではなく、情報としてどう届けるかという設計視点が不可欠です。   

 シンガポールとの違い      

日本のゴミ箱事情を理解するうえで、対照的な例としてよく挙げられるのがシンガポールです。両国はともに「街がきれいな国」として知られていますが、その実現方法には大きな違いがあります。

シンガポールでは、街中や公園、バス停などにゴミ箱が高い密度で設置されています。おおよそ5〜25メートル間隔で配置されており、環境庁によって6,000個以上が管理されています。観光客にとっては「ゴミを捨てる場所に困らない」設計が徹底されているのが特徴です。

さらに、一部のゴミ箱にはソーラーパネルが搭載されており、内部でゴミを圧縮することで回収効率を高めるなど、テクノロジーの活用も進んでいます。分別用のリサイクルゴミ箱が併設されているケースも多く、利便性と環境配慮が両立されています。

こうしたインフラ整備に加え、ルールによる抑止も強力です。シンガポールではポイ捨てに対して非常に厳しい罰則が設けられており、初犯でも最大約2,000シンガポールドル(約25万円)の罰金が科される可能性があります。つまり、「捨てやすい環境」と「捨てさせないルール」の両面から、街の清潔さが維持されているのです。

一方、日本ではテロ対策や管理コストの観点からゴミ箱の設置が抑制されており、「持ち帰り」を前提とした設計が基本となっています。また、渋谷区のように、店舗や事業者に対して周辺の環境美化を求めるルールも整備されています。2026年3月の条例改正では、この責任がより明確化され、違反した場合には最大5万円の過料(事業者側)が科される可能性があります。

ただし、日本の場合はシンガポールとは異なり、観光客個人に対して厳しい罰則を課すのではなく、事業者側に管理責任を求める構造になっています。この違いは、街の設計思想にも大きく影響しています。    

 

 デジタル案内で解決する  

シンガポールは、個人に対して最大約2,000シンガポールドル(約25万円)の罰金を科すことで行動を制御しつつ、高密度なゴミ箱設置で利便性を担保する「個人責任モデル」です。一方、日本は渋谷区のように、事業者側に最大5万円の過料を課すなど、環境維持の責任を分散させる「事業者責任モデル」を採用しています。

つまり、シンガポールは「個人責任モデル」。日本は「事業者責任モデル」といえます。この違いを踏まえると、日本においてシンガポールのようにゴミ箱を大量設置したり、観光客に厳しい罰則を課したりすることは、現実的には難しいといえます。

だからこそ重要になるのが、「既存の仕組みのまま、体験を改善する方法」です。その有効なアプローチのひとつが、ゴミ箱やトイレといった生活インフラをデジタル上で可視化することです。

  • ゴミ箱・トイレの位置情報をGoogle Mapや観光マップに掲載
  • 観光アプリ内で多言語対応の検索機能を提供
  • 街中のサイネージやQRコードから最寄りのゴミ箱を案内

これらは新たに設備を増設する必要がなく、既存のインフラを活用しながら実装できるため、コスト面でも現実的です。また、民間事業者が管理するゴミ箱も含めて情報を統合することで、日本特有の「分散型インフラ」の弱点を補うことができます。

重要なのは、「探させる」のではなく「迷わせない」設計です。物理的な制約を変えられないからこそ、情報設計によって体験を補完する。この視点こそが、これからの観光地づくりにおいて求められています。 

 

 まとめ  

訪日タイ人の約58%が「ゴミ箱が見つからない」と感じているように、この問題は観光体験の中で確実に発生している課題です。また、観光庁の調査でも「ゴミ箱の少なさ」は訪日外国人の困りごととして最も多く挙げられています。ただし、この問題は単純に「ゴミ箱が足りない」という話ではありません。日本ではテロ対策や管理コスト、持ち帰り文化、そして事業者責任モデルといった背景があり、構造的にゴミ箱が増えにくい仕組みになっています。

さらに本質的には、「あるのに使えない」「どこにあるか分からない」といった、UXの問題が大きく影響しています。だからこそ重要なのは、「設置」ではなく「設計」という視点です。ゴミ箱やトイレの位置情報をマップ上で可視化する、観光アプリで検索できるようにする、サイネージやQRコードで誘導する。こうした取り組みによって、既存のインフラを活かしながら、観光体験を大きく改善することができます。

重要なのは、「探させる」のではなく「迷わせない」ことです。日本の清潔さは大きな魅力です。その価値をさらに引き出すためにも、これからの観光地づくりでは、情報と導線の設計がより重要になっていくでしょう。 

 

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