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日本の魅力である電車移動はなぜ難しい?タイ人観光客の75%が「乗り換えが複雑」と回答【訪日外国人調査】

作成者: クリスクアジア海外事業部|2026/05/27 2:59:59

こんにちは!クリスク・ジャパン編集部です。

日本を訪れる外国人観光客にとって、「電車での移動」はまさに日本ならではの魅力のひとつです。時間通りに到着する正確さ、張り巡らされた路線網、そして都市から地方までシームレスに移動できる利便性。これらは、他国と比較しても非常に高く評価されています。

一方で、その“便利さ”が、そのまま“難しさ”にもなっていることをご存じでしょうか。

今回、クリスクタイによる独自調査では、75%のタイ人観光客が「電車の乗り換えが複雑で迷う」と回答しました。日本の交通は優れているはずなのに、なぜ多くの外国人が迷ってしまうのか。その背景には、日本特有の「構造的な分かりにくさ」があります。

この記事では、

・ なぜ日本の電車移動は魅力でありながら難しいのか
・ タイとの比較で見える“分かりにくさの正体”
・ 京都など地方で起きているリアルな移動課題
・ 自治体・交通機関が取り組むべき現実的な改善視点

について、現地の視点を交えながら紐解いていきます。

「交通は整備されているのに、なぜ満足度が上がらないのか?」
そんな疑問を持つ方にとって、ヒントになる内容です。

 日本の電車の魅力と難しさ    

日本の公共交通機関は、世界的に見ても非常に優れています。特に鉄道は、数分単位で正確に運行され、都市から地方まで網羅されています。訪日観光客にとっても、「時間通りに来る安心感」は大きな価値です。

実際、タイのユーザーからも 「日本の電車は遅れないから安心」「どこへでも行ける」といった声は多く聞かれます。しかしその一方で、その“正確さ”や“利便性”が、別の形で負担になっている場面も少なくありません。

例えば東京では、同じ目的地に対して複数のルートが提示されます。数分違いでいくつもの電車があり、「どれを選べばいいのか」を判断する必要があります。さらに駅構内に入ると、その難易度は一気に上がります。複数の路線が立体的に交差し、改札やホームが複雑に分岐しているため、正しい情報を持っていても、その通りに動けないという状況が生まれます。

そしてこの問題は、都市部に限った話ではありません。京都のような観光地では、電車ではなくバス移動が中心になります。しかし観光シーズンにはバスが満員になり、そもそも乗れないというケースも珍しくありません。

「時間通りに移動できる」と思っていた観光客にとって、このギャップは大きなストレスになります。つまり日本の交通は、“正確で便利であること”と“使いこなす難しさ”が共存しているのです。  

 

 タイの電車との違いが鍵     

この“難しさ”を理解するうえで、タイの交通との比較は非常に分かりやすいヒントになります。バンコクでは、BTS(スカイトレイン)やMRT(ブルーラインなど)が中心で、交通構造は比較的シンプルです。

特に特徴的なのが、路線が色で明確に分けられていることです。ブルーライン、ゴールドライン、レッドラインといった形で視覚的に識別できるため、「どの路線に乗るか」を直感的に理解できます。そのため、Google Mapsでルートを確認すれば、その通りに迷わず移動できるケースがほとんどです。

一方、日本では色分けはあるものの、JRでは「山手線」「総武線」、東京メトロでは「丸ノ内線」「銀座線」とそれぞれ運営会社も異なりながら、乗り継ぎはシームレスに対応しているため、便利が故にそれぞれの区別がし辛くなってしまいます。

各路線の名称と配色等が直感的に結びつきにくく、日本では “ルートが分かっても迷う”という現象が起きやすくなります。この違いは、情報量の問題というよりも、「どう理解させるか」という設計の違いと言えるでしょう。  

 駅の出口が迷いを生む     

では、具体的にどこで迷うのでしょうか。多くの観光客がつまずくのが、駅の「出口」です。

例えば、新宿駅では、東口・西口・南口といった出口ごとに、まったく異なるエリアに出てしまいます。目的地に近い出口を選ばなければ、地上に出てから大きく遠回りすることになります。間違えることなくその駅で下車していても、出口を間違えるだけで大きなタイムロスとなります。

さらに厄介なのは、一度ルートを間違えると修正が難しいことです。最初に誤った通路や階段に進んでしまうと、そのまま別の出口に誘導されてしまい、途中で軌道修正できません。結果として、正しいルートに戻るためには、ホーム付近まで戻ってやり直す必要があるケースもあります。

このように、日本の交通網は便利であるが故に、 “構造そのものが迷いやすい”状態になっているのです。    

 

 「分かる」と「動ける」の違い    

多くの観光客はGoogle Mapsを使っています。ルート自体は正確で、情報としては十分に整っています。それでも迷いがなくならないのはなぜでしょうか。それは、Google Mapsが示しているのが、あくまで 「設計図」であって「行動」ではないからです。

現地では、どの通路を進むのか、どの階段を上がるのか、どの改札を通るのかといった細かな判断が求められます。さらに、日本の公共交通は電車だけではありません。京都のようにバスが中心となる地域では、混雑によって乗れないこともあります。また、新幹線や長距離バスでは、乗り場や利用方法の理解が必要になります。

つまり日本では、「分かる」と「動ける」の間に大きなギャップがあるのです。    

 

 地域ごとに変わる「移動ルール」     

この問題は、都市部だけの話ではありません。むしろ地方においては、別の難しさがよりはっきりと表れます。東京では電車、京都ではバス、地方では本数の限られたローカル線。場所が変わるたびに、観光客は交通の使い方を学び直す必要があります。この「前提の違い」が、訪日体験における見えにくいハードルになっています。

京都では、観光客の集中によりバスが慢性的に混雑し、地域住民が利用しづらい状況が生まれています。交通が本来の役割を超えて、体験のボトルネックになってしまっている状態です。

一方で、同じく人気観光地である白馬では、異なるアプローチが取られています。白馬では、オンデマンド型の移動サービスや多言語対応のアプリなどを通じて、観光客が迷わず移動できる環境を整えています。料金設計や運行時間も利用実態に合わせて調整されており、単なる交通手段ではなく、移動体験そのものが設計されています。

その結果、観光客の満足度は高く、リピート率や地域価値の向上にもつながっています。

同じ観光地でありながら、京都は「交通が体験を制約し」、白馬は「交通が体験を支えている」。この違いは、インフラの量ではなく、 “どう使わせるか”という視点の差にあるのではないでしょうか。    

 

 交通は「整備する」から「導く」へ 

では、どうすればよいのでしょうか。すべての地域が白馬のような仕組みをすぐに導入できるわけではありません。だからこそ重要なのは、発想を変えることです。それは、 「交通を整備する」から「交通を導く」へという視点です。

例えば、混雑する時間帯を事前に伝えること。代替ルートを提示すること。乗り方やマナーをあらかじめ理解してもらうこと。どれもシンプルですが、 “事前に知っているかどうか”だけで行動は大きく変わります。

また近年では、MaaSのように交通手段を一体的に捉え、「どう移動すればよいか」を一つの体験として設計する考え方も広がっています。すべてをシステムで解決するのは難しくても、 “ひとつの移動を分かりやすくする”ことは今すぐできるはずです。

 

 まとめ  

日本の公共交通は、間違いなく世界トップクラスのインフラです。しかしその価値は、 理解され、使いこなされて初めて発揮されます。移動で迷うことは、時間や不安だけでなく、観光や消費に使えるはずだった、大切な可処分時間を削ってしまいます。

一方で、移動がスムーズになれば、その時間は新たな体験や消費へと変わります。つまり、交通インフラは単なる移動手段ではなく、観光の導線と可処分時間を生み出す基盤です。交通の使い方が正しく伝われば、訪日外国人の行動は変わり、地域内の回遊が生まれ、消費の拡大につながっていきます。

そして、日本政府が掲げる「2030年に訪日外国人6,000万人・消費額15兆円」という目標を実現するためには、単に人を増やすだけでは不十分です。既存の交通を麻痺させず、住民にとっての大切な交通インフラを守りながら、観光客にも快適にその交通インフラを利用してもらうこと。

そのためには、「迷わず動ける状態をつくり、行動を適切に導くこと」が不可欠です。交通インフラは、観光・生活・経済をつなぐ基盤です。その設計次第で、地域の未来は大きく変わっていくのではないでしょうか。 

 

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