こんにちは!クリスクアジア編集部です。
近年、ベトナムのZ世代(1997年〜2012年生まれ)は、国内消費の中核を担う存在へと成長しています。彼らにとってSNSは、単なる情報収集やコミュニケーションの手段にとどまらず、購買行動やブランド認知といった意思決定にも大きな影響を与える重要なチャネルとなっています。
本記事では、ベトナムの現役大学生でZ世代にあたるグエン・ホアン・バオ・ゴックさんへのインタビューをもとに、現代のベトナムの若者がSNSとどのように向き合っているのかを深掘りしています。
このインタビューからは、SNSにおけるアプリごとの明確な使い分けや、SNSに費やす時間、コンテンツへの接し方、さらにはオンラインの情報がどのようにオフラインの行動に影響しているのかといった実態が浮かび上がってきました。
Z世代のリアルな声を通じて、ベトナム市場におけるSNS活用のヒントを探っていきます。
ゴックさんの一日は、Zalo(ザロ)を開くことから始まります。Zaloはベトナムで人気のあるメッセンジャーアプリで、日本におけるLINEのような存在です。
現在、就職活動中のゴックさんにとって、この習慣は企業からの連絡を見逃さないために欠かせないものとなっています。
続いて、ゴックさんはFacebookやInstagramも頻繁にチェックしている一方、TikTokの利用頻度は比較的低めだそうです。
理由は「見始めると止まらなくなり、気づいたら長時間経過してしまうため」で、大学卒業後は語学学習など自己啓発に時間を使っていることから、エンタメ性の強い TikTok は集中力を奪いやすいと感じているそうです。
Instagram は主に見ることを中心に活用しており、アイドルや料理系の動画をフォローして楽しんでいますが、Facebook と比べると能動的な利用は少なめのようです。
最近話題の Threads については名前を知っているものの、実際には利用していないとのことでした。
Zaloは主にビジネス用途で活用しており、企業とのやり取りやビジネス関連ニュースの確認などに使用しています。企業からの返答がZaloで届くことが多く、メールよりも早く確認・返信できる点が便利だと語ってくれました。
一方で、友人との日常的なやりとりや通話にはFacebookを利用しており、Zaloはあくまで仕事用として割り切って使っているそうです。
このように、SNSごとに特徴や機能が異なる中で、ユーザー自身が生活スタイルや目的に応じて使い分けている様子がうかがえます。
ゴックさんの事例からも、ベトナムZ世代がSNSを目的別に活用している実態が見えてきました。
ゴックさんが1日の始まりにSNSを開くのは、朝の7時から8時頃です。
中でも 最も頻繁に確認しているのはFacebook で、1日に何回チェックしているか分からないほどだそうです。
SNSの利用時間は1日あたり合計6〜7時間に及び、生活の大きな一部を占めています。
彼女は、SNSを見ていないとどこか物足りなさを感じるし、時代遅れになったような気がすると話してくれました。この発言からも、SNSが単なる娯楽を超えて、生活や社会とのつながりを保つための“欠かせないツール”になっていることが伺えます。
SNSの通知設定にも、彼女なりのルールがあります。たとえばZaloでは、政治やニュースなど重要な情報の通知をONにしており、頻繁に確認しているそうです。
一方、Facebook の通知はアイドル関連の内容が多いため、あまり頻繁にはチェックしていません。
またゴックさんは、スマホを手に取って無意識のうちにスクロールしてしまうことがよくあるとも話してくれました。
何か物足りなさを感じたときに、面白いコンテンツが見つかるかもしれない 。そんな期待感からSNSを開く行動は、Z世代に広く見られる共通の傾向といえるでしょう。
ただし彼女は、こうした行動が自己啓発の妨げになることも自覚しており、最近ではSNSの使用時間を意識的に制限するようになったそうです。すべての投稿が役に立つわけではないため、学習に役立つコンテンツを中心に見るなど、自分にとって価値のある使い方を模索しています。
このケースから、Z世代はすべての情報を無条件に受け入れているわけではなく、「自分にとって意味があるか」「時間を費やす価値があるか」を基準に取捨選択していることが分かります。
情報発信を行う企業にとっても、単にSNSで目立つ施策を行うだけでなく、彼らのライフスタイルや心理に寄り添い、生活の一部として自然に受け入れられるコンテンツ設計が重要だといえます。
ゴックさんが特に惹かれるのは、ゴシップやドラマ系の話題です。気になる内容を見つけると、すぐにその詳細を追いかけたくなるそうです。また、長い文章よりも短くて簡潔な動画を好み、音声だけで内容を理解できる点にも魅力を感じていると話してくれました。
近年は TikTok や Instagram を中心にショート動画の人気が高まっていますが、ゴックさんのように手軽でわかりやすい形式を好む Z 世代は多くいます。忙しい日常の中で、隙間時間に情報を得るには、短尺かつ要点がまとまったコンテンツが相性の良いスタイルなのかもしれません。
SNS でフォローしているのは、俳優や女優、そして化粧品レビューを発信するインフルエンサーが中心です。
一方で、あまり有名でない個人の投稿や、不正確な政治情報、誇張された内容には関心を示さず、すぐにスキップしてしまうとのことでした。
投稿や動画を保存するのはおもしろい動画や学習に役立つ記事が中心で、保存は非公開設定で行い、他人に見られないようにしているそうです。芸能人の投稿については閲覧するだけで満足することが多く、たまに「いいね」で反応することはあるものの、コメントを書き込んで議論に参加することはほとんどないと話していました。
ゴックさんの Facebook アカウントでは、プライベートな写真や、学習目的で保存しておきたい記事を投稿しています。特に学習系の投稿は自分だけが閲覧できるように公開範囲を制限しており、「他人にはあまり見られたくない」という思いがあるようです。
このように、SNS 上では控えめで、発信よりも閲覧を重視する傾向が見られます。現実では社交的でも、インターネット上では見ることが中心になる。この特徴は、多くの Z 世代に共通する行動スタイルといえるでしょう。
ゴックさんは、TikTokで見たファッション動画を参考に洋服を選ぶことはあるものの、高級ブランドから受ける影響は大きくないといいます。また、料理動画もよく視聴していますが、実際に作るのは自分の生活に取り入れやすい手軽なメニューに限られているそうです。
こうした行動から、彼女がSNSコンテンツを現実の生活に活かす際うえで、実用性や再現性といった現実的な視点を大切にしていることがうかがえます。
旅行先のレビュー動画や商品紹介広告については、すぐに信用することはなく、まずコメント欄を確認し、他人の体験談を確認するそうです。
信頼できる発信者がいる一方で、誇張された情報も多いため、自分自身で見極める力が重要だと考えています。
オンラインショッピングの利用頻度は高くありませんが、Shopeeを使う際には販売者の信頼性を最も重視しています。レビュー評価や販売履歴を丁寧にチェックし、安心して購入できるかを見極めてから注文しています。
一方で、SNS上で家族とつながることには少し抵抗があるとも話してくれました。その理由としては、Z世代ならではの感覚で、投稿の内容に特別な意味を求めないことも多く、日常的で軽い内容も多く、年上の世代には見られたくないと感じることがあるようです。
そのため、家族との連絡にはZaloを使い、Facebookは自分の自由な空間として使い分けています。
最後に、もしSNSが使えなくなったらどう感じるかを尋ねると、「時代遅れになってしまうと思う」と答えてくれました。テレビをほとんど見ない彼女にとって、SNSは社会とのつながりを保つための大切な窓口です。
だからこそ、情報をどう選ぶか、自分にとって必要なものを見極める力が大切だと強調していました。
Z世代を対象としたマーケティングでは、派手さよりも信頼性や実用性が重視される傾向があります。商品・サービスが自分の生活にどのようにフィットするかを冷静に見極めようとする姿勢が背景にあるためです。
企業には、Z世代のこうした「見極める視点」に応えるため、過度な演出ではなく、リアルな体験に基づいたストーリーや、使う理由が直感的に伝わる情報設計が求められています。
今回ご紹介したゴックさんの声から、ベトナムのZ世代にとって、SNSは単なる娯楽の手段ではなく生活インフラの一部として深く根付いていることが読み取れました。
アプリごとの使い分けや目的に応じた利用スタイル、コンテンツを見極める目、そして情報との適切な距離感。これらは、プロモーションを行う立場にとっても非常に重要な示唆を与えてくれます。
Z世代がSNS上で価値を感じるポイントとしては、「共感できるかどうか」「実生活につながるか」「自分にとって意味があるか」どうかといった視点が挙げられます。
一方的な広告や過剰な演出ではなく、彼らの生活感覚に寄り添い、共感と実用性を兼ね備えた発信が求められます。
“共感と実用”のバランスをどう設計するか。それが、これからのベトナムZ世代向けマーケティングにおける成功の鍵となるでしょう。
現在クリスクでは、現地在住スタッフのネットワークを活かし、SNSや口コミ文化に根ざしたリアルなプロモーション支援を行っています。
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