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タイでBLドラマの視聴率急増!多様性をメッセージとした企業PRにも活躍

作成者: Panida Rugsaj(パニダー・ラックサット)|2022/11/29 21:30:00

こんにちは!クリスク・タイのパーです!

最近では日本でも、同性愛がテーマだったり、LGBTQ+の登場人物が出てきたりするドラマをよく見かけるようになってきたのではないでしょうか。
タイでも今、BL(ボーイズラブ)ドラマが増えてきています。現在、タイのBLドラマは国内利益が1,000Mバーツ(約39億円)以上と予測されるほど、現地でも人気が高いドラマのジャンルになっているのです。

ちなみにタイではBLドラマのことを「Y Series」と呼びます。この「Y」は日本語の「やおい」に由来しています。

しかし、タイで今なぜBLドラマが人気となったのでしょうか?
この記事では、現地マーケッター視点から、なぜ人気になったのか、そして企業はその人気をマーケティングに活かすことは可能なのかを紹介したいと思います。

人気の理由① コロナ禍や動画配信サービス登場を背景に視聴率拡大

まずは、BLドラマが実際タイでどのくらい人気が高まっているのか見ていきましょう。

LINE TVにおけるBLドラマの2020年の視聴率は、前年2019年の約3倍。また、LINE TVでBLドラマが最初に放送された2016年と比べると、視聴回数は最大で61%増加したとレポートされています。

LINE Thailand傘下の市場調査チーム、LINE Insightsのレポートによると、主な視聴者は18〜34歳の女性となっていますが、なんと、65歳以上の視聴者も増えてきているというデータもあります。

BLドラマ視聴者の年齢層が広がっている背景には、以前はスマートフォンを使って個人でドラマを視聴していたところ、コロナ禍によって家族でスマートテレビを視聴するライフスタイルに変わってきたことが挙げられます。

また、Netflixのような動画配信プラットフォームが登場して人気が高まったことで、一般のテレビ放送だけでなく、コンテンツの選択肢が多様になったことも、理由のひとつと考えられます。

BLドラマ視聴者層の世帯収入は月に8万バーツ(約31万円)となっており、高収入世帯が多いことがわかります。また、BLドラマのファンはスポンサーのブランドや作品中に登場したブランドを支持する習慣があるということもわかってきています。

人気の理由② 俳優をカップルとして応援する文化

タイのドラマは社会人を主役にしたストーリーが多いのですが、イケメン俳優たちが登場する学園ドラマは若い世代に馴染みやすく、女性視聴者に人気です。
日本では仮面ライダーや戦隊ヒーローシリーズがイケメン俳優たちの登竜門となっていますが、タイではそれが学園ドラマとなっているのです。

また、タイでは異性同士・同性同士に関わらず、俳優などの有名人で相性の良い2人を、ファンたちの想像の世界で恋愛関係のカップルとして応援し、「クー・ジン」と呼ぶ文化が昔からあります。学園ドラマでもファンたちは「クー・ジン」に熱狂しています。

そうした文化を背景に、主演俳優のコンビはドラマが終わっても継続して2人でプロモーション活動をするなど、「クー・ジン」としてファンサービスを続けます。

この「クー・ジン」の文化がもともとあったため、BLドラマに描かれる同性愛も受け入れられやすいという背景があります。

人気の理由③ タイでも広がるダイバーシティ意識

BLと切っても切れないのが、LGBTQ+などへの多様性への意識です。

現在、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン/多様性、公正性と受容性)という言葉が世界的トレンドとなっていますが、これはタイでも同じです。

特に若者世代にとってはこれが非常に重要なキーワードとなっており、たとえば「男らしさ」「女らしさ」からの解放や、美のスタンダードの多様化などを重視したブランドは、評価や関心が高まってきています。

Googleの調査によれば、タイでは「ユニセックス」という検索ワードがここ4年で2倍に伸びたとのこと。また、性別にとらわれない商品への関心は、昨年2021年と比べて54%増加したことがわかっています。
こういった社会背景も、BLドラマへの興味関心につながっている可能性が考えられます。

BLドラマで人気に火がついたインフルエンサー

今、タイで行列ができるお店を見かけたら、それはほぼBLドラマ出身俳優に絡むキャンペーンだと言っても過言ではありません。
彼らはインフルエンサーとして若者を中心に多大な影響力を持ち、関連する商品の売り上げに大きく貢献しています。

KOLとなったBLドラマ出身俳優コンビには、たとえば次のような人たちがいます。

ブライト&ウィン

https://www.c7-2gether.com
(日本公式サイト)

大人気ラブコメ小説を原作としたBLドラマの主役俳優コンビ。最近は日本でも有名なドラマ『花より男子』の主役も演じました。

2人は20ブランド以上のプレゼンターを務めていますが、Instagramのフォロワーはブライトが約1665万人、ウィンが約1413万人(2022年11月時点)。タイだけではなく東南アジアで大人気のKOLとなっています。

(YouTubeチャンネル「シネマトゥデイ」のインタビュー動画より)

ビウキン&ピーピー

Rakuten TV『I Promised You The Moon』公式サイト

韓国で行われたSeoul International Drama of the Year Awards 2021の優勝作品『I Promised You the Moon ~僕の愛を君の心で訳して~』という、2人の青年が思いを寄せ合いながら成長するBLドラマの主役俳優コンビ。

ピーピーは現在、中性的ファッションのアイコンとしてカリスマ的人気を誇り、ビウキンは有名歌手とコラボ曲をリリース。日本でもSUMMER SONIC 2022に登場してTwitterで話題となり、ハッシュタグが世界トレンド1位になりました。

ไส้กรอกซีพี กินดีทุกเช้า(YouTubeチャンネル「cpbrand thailand」)

どのような企業がタイアップを行っている?

LINE TVによる2020年末の報告では、「BLドラマのファンをターゲットにした商品TOP5」は次のようになっています。

1位:飲料
2位:スナック
3位:スキンケア
4位:メンズウェア
5位:ファストフード

若者の経済力でも買いやすい飲料やスナック、そしてファストフードは、BLドラマと好相性。また、メイン視聴者層となる女性向けのスキンケアもランクインしています。メンズウェアも、好きな俳優が着ている服でコーデしたいというファンが多く、4位に入っています。

BLドラマ・ダイバーシティと関連したマーケティング事例

ここで、BLドラマと関連して人気になったブランドをいくつかご紹介しましょう。

M・A・C

大人気BLドラマ出身で中性的な魅力が溢れる俳優のピーピーがプレゼンターに就任し、新商品リップ2種類を使ったメーク姿をお披露目。彼が登場するイベントへの参加権利やグループショットをプレゼントするキャンペーンも展開して大注目となりました。

結果、男性のコスメプレゼンターはタイではとても新鮮だったこともあり、ファン以外からも多くの関心を集めることに。性別にとらわれないプレゼンターの起用によって、ダイバーシティに対する企業の考え方が広く伝わりました

MISTINE

タイで認知度の高い化粧品ブランドMISTINEは、これまで有名女優を長く起用してきました。しかし2021年末、Z世代の心を掴むために、「美の基準のダイバーシティ」をテーマにした「チャン・マン・ナー(私は自分の顔に自信を持つ)」というキャンペーンを、オンラインとオフラインでローンチ。

その結果、若者たちからTwitterで絶賛され、多くのマーケティングメディアに成功事例として取り上げられました。

(MISTINEのキャンペーンの一部の動画)

注意!コーポレートメッセージを打ち出すのも大切

ダイバーシティやLGBTQ+を活かしたマーケティングは、今ブランドが実施するべき戦略としてトレンドになっています。しかし、当たり前ですが、多様性を象徴する人たちを流行に乗るための素材として起用するだけのマーケティングはおすすめしません。

一番重要なのは、多様性を本当に大切にしているという誠実な思考を表現し、継続的に伝えていくことです。

まとめ

タイにおけるBLドラマ人気は日本に引けを取らず、大きく伸び続けています。
もともとBLを受け入れやすい文化的な背景があったこと、コロナ禍で映像メディアの視聴習慣が変わったことなどが背景となり、視聴者を広げることに成功しています。

また、BLドラマで人気となった俳優コンビは、その後も継続的に活躍することにより、ブランドのKOLとして売り上げに大きく貢献しています。
その結果、社会のLGBTQ+への認知度も上昇し、ダイバーシティや人権活動にもより注目が集まるようになってきています。

ダイバーシティ、LGBTQ+をテーマとしたマーケティングは戦略としても、社会貢献活動としても大きなメリットがあります。しかし、センシティブな話題でもあるため、企業が本質をしっかりと理解し、正しく打ち出すことが必須です。

タイでプロモーションやブランディングをする際には、現地の消費者動向をしっかり把握する必要があります。もし興味がありましたら、ぜひクリスクまでお問い合わせください。

 

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(執筆:Panida Rugsaj 編集:クリスク海外事業部)