こんにちは、クリスクアジア編集部です。
今回のクリスクタイによる独自アンケート調査では、「日本ブランドは品質が良いと信じるか」という質問に対して、多くの回答者が肯定的な姿勢を示しました。その一方で、実際に商品を購入する際には、「レビューを確認してから買う」という声も目立っています。
さらに、購入を決めるうえで信頼する情報を尋ねたところ、「一般ユーザーのレビュー」が92.9%で最も多く、「インフルエンサー」は21.4%となりました。
この結果だけを見ると、「タイではインフルエンサーマーケティングよりも、一般ユーザーのレビューのほうが重要なのではないか」と感じるかもしれません。
しかし、両者は競合するものではありません。
重要なのは、インフルエンサーを一括りにせず、「KOL」と「KOC」という異なる役割に分けて考えることです。
KOL(Key Opinion Leader)は、高い知名度や専門性を生かし、商品を広く認知させる存在です。一方、KOC(Key Opinion Consumer)は、一般消費者に近い立場から、実際に商品を使用した感想を発信し、購入を迷っている人の背中を押します。
これまで東南アジアでは、有名なKOLを起用して一気に商品を広める施策が注目されてきました。しかし、情報があふれ、消費者が広告的な投稿を見分けるようになった現在、KOLによる認知獲得だけで購買まで完結させることは難しくなっています。
これから必要なのは、KOLが生み出した話題をKOCのリアルな体験へつなぎ、さらにShopeeやLazadaの商品レビューへ広げていくことです。「KOLに紹介してもらえば売れる」という一回完結型の発想から、「KOLからKOCへ、KOCから一般ユーザーのレビューへ」という循環型のマーケティングへ。
これが、タイをはじめとする東南アジア市場における、新しい勝ちパターンになりつつあります。
今回の調査では、商品購入の際に信頼する情報として、92.9%が「一般ユーザーのレビュー」を選びました。一方、インフルエンサーを選んだ人は21.4%でした。
ただし、この質問は「購入を決める際に信頼する情報」を尋ねたものです。商品を初めて知るきっかけや、ブランドへの興味が生まれる段階まで含めて、一般ユーザーのレビューがすべてを担っているという意味ではありません。
まだ商品名を知らない消費者は、ShopeeやLazadaのような大手ECサイトで、その商品名を検索すらできません。どれだけ高評価のレビューが蓄積されていても、商品自体を知らなければ、そのレビューへたどり着くこともありません。
そこで重要になるのが、TikTok、Facebook、Instagram、YouTubeなどでの情報発信です。なかでもKOLには、企業からの広告だけでは届きにくい消費者へ、一気に商品を知らせる力があります。つまり、21.4%と92.9%という数字は、「インフルエンサーの影響力が小さい」「一般ユーザーだけを重視すればよい」ということを示しているわけではありません。
KOLやKOC、一般ユーザーのレビューが、購買プロセスの異なる段階で役割を果たしていることを示す結果として捉える必要があります。
KOLとKOCは、どちらもSNS上で消費者の行動に影響を与える存在ですが、得意とする役割が異なります。
KOLとは「Key Opinion Leader」の略称です。
特定分野の専門家、著名人、俳優、モデル、大規模クリエイターなど、高い知名度や専門性、影響力を持つ発信者を指します。フォロワー数は数万人から数百万人以上に及ぶこともあり、新商品やブランドの情報を短期間で広く届けることを得意としています。
美容分野で信頼されているクリエイター、家電やガジェットに詳しい専門家、幅広い知名度を持つタレントなどが代表例です。
一方、KOCとは「Key Opinion Consumer」の略称です。
一般消費者に近い立場から、実際に商品を使用した感想や体験を発信する人を指します。フォロワー数は数百人から数万人程度が一つの目安ですが、人数だけで明確に区分されるものではありません。
KOCの影響力は、知名度の高さよりも、親近感や投稿内容の具体性から生まれます。
「自分と同じ悩みを持っている人」
「同じような生活をしている人」
「広告ではなく、本当に使った感想を伝えてくれそうな人」
そのように受け取られることが、KOCの強みです。
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比較項目 |
KOL |
KOC |
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主な意味 |
専門家・著名な発信者 |
消費者に近い発信者 |
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影響力の源 |
専門性、権威、知名度 |
親近感、具体性、実体験 |
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フォロワー数 |
数万人~数百万人以上 |
数百人~数万人程度 |
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得意な領域 |
認知拡大、話題化、ブランド形成 |
比較検討、信頼形成、購買促進 |
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コンテンツ |
完成度の高い企画型投稿 |
日常的でリアルな体験投稿 |
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消費者との関係 |
憧れや専門家への信頼 |
友人や身近な人への信頼 |
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主なKPI |
リーチ、再生数、検索数 |
保存、質問、購入、レビュー |
KOLは「多くの人に知らせる力」に優れ、KOCは「自分にも合いそうだと思わせる力」に優れています。どちらが優れているかではなく、マーケティングのどの段階で起用するかが重要なのです。
KOCと一般ユーザーによるレビューは近い存在ですが、厳密には同じではありません。
KOCは、一般消費者に近い立場でありながら、SNS上で一定の発信力を持っています。企業が商品を提供したり、企画への参加を依頼したりすることもあります。
一方、ShopeeやLazadaに掲載される一般ユーザーのレビューは、商品を購入した消費者が、購入後の体験として投稿するものです。両者の関係を整理すると、次のようになります。
KOLは、大きな認知と話題をつくります。
KOCは、その商品が実際の生活でどのように使えるのかを見せ、消費者との距離を縮めます。
一般ユーザーのレビューは、KOLやKOCの投稿を見て商品を知った人が、購入直前に確認する最後の信頼材料になります。つまり、KOCはKOLと一般ユーザーの間をつなぐ存在です。
企業がKOLによる投稿だけで施策を終わらせてしまうと、商品は話題になっても、一般消費者に近い使用例が不足します。
一方、KOCを複数起用すれば、年齢、地域、職業、肌質、生活スタイルなど、異なる視点から商品の体験を発信できます。それらの投稿を見て商品を購入した人が、さらにShopeeやLazadaへレビューを投稿すれば、企業が直接発信しなくても、新しい購入者を後押しする情報が蓄積されていきます。
タイ市場へ初めて進出する日本ブランドにとって、KOLは依然として重要な存在です。日本で知名度のあるブランドでも、タイの消費者が同じように知っているとは限りません。ブランド名が知られていなければ、検索も比較も始まりません。
この段階でKOLを起用することで、商品やブランドを短期間で多くの人へ知らせられます。KOLの強みは、単純なフォロワー数だけではありません。専門知識のあるKOLであれば、商品の機能や成分、ほかの商品との違いを分かりやすく説明できます。
美容系のKOLであれば、化粧品の成分や使用順序、肌質による違いを伝えられます。家電系のKOLであれば、性能や耐久性、競合製品との違いを専門的な視点から解説できます。
また、著名なKOLの起用は、ブランドイメージの形成にも役立ちます。高級感を出したいのか、若年層に広げたいのか、家族向けの商品として定着させたいのかによって、ブランドの印象を短期間でつくることができます。
したがって、KOCが注目されているからといって、KOLが不要になったわけではありません。むしろKOLには、KOCや一般ユーザーだけではつくりにくい、大きな認知と最初の信頼を生み出す役割があります。
一方で、「影響力の大きなKOLを起用すれば、東南アジアでは商品が売れる」という考え方には限界があります。SNS上で多くの人に見られることと、実際に購入されることは同じではないからです。
消費者はKOLの投稿を見て商品に興味を持っても、その場ですぐに購入するとは限りません。
コメント欄で価格を確認し、商品名を検索し、ほかの人の投稿を探します。その後、ShopeeやLazadaへ移動し、価格、送料、販売実績、ショップ評価、配送日数、返品条件を比較します。
そして最後に、一般ユーザーのレビューを確認します。
この段階で、KOL以外の投稿がほとんど見つからなかったり、商品ページのレビューが少なかったりすると、「広告として紹介されているだけではないか」という不安が残ります。
KOLの影響力が大きいほど、一時的なアクセスは集めやすくなります。しかし、受け皿となるKOCの投稿やレビューが不足していれば、そのアクセスを購入へ転換できません。
問題はKOLを起用することではなく、KOLの投稿後に何を起こすかが設計されていないことです。これからのインフルエンサーマーケティングでは、投稿の再生回数だけでなく、その後に検索、比較、購入、レビュー投稿までが発生したかを確認する必要があります。
KOLが紹介した商品に興味を持った消費者は、次に「自分にも合うか」を確認します。ここで力を発揮するのがKOCです。
たとえば、美容系のKOLが新しい化粧品を紹介すれば、短期間で多くの人に商品の存在を知らせられます。その後、異なる肌質や年代のKOCが、実際の使用感、香り、色味、タイの暑い気候で使用した感想などを投稿します。
消費者は、KOLの投稿を見て商品を知り、自分と似た肌質や生活環境のKOCを見つけることで、購入後の姿を具体的に想像できるようになります。
食品であれば、KOLが商品を大きく話題化した後、複数のKOCがタイ料理へのアレンジ、家族の反応、食べ方、味の感想を発信できます。
家電であれば、専門的なKOLが性能を説明し、KOCが実際の住宅での設置方法、音、サイズ感、日常的な使い勝手などを伝えます。
KOLの投稿は、「この商品は注目されている」と感じさせます。
KOCの投稿は、「この商品は自分の生活にも合いそうだ」と感じさせます。
一般ユーザーのレビューは、「実際に購入しても大丈夫そうだ」という最後の確信を与えます。この役割分担が、KOLからKOCへつなぐ施策の基本です。
タイでは、日本製品に対して「品質が高い」「安全性に配慮されている」「長く使える」といった好意的なイメージがあります。今回のクリスクタイによる独自アンケート調査でも、日本ブランドの品質を信頼する回答が多く見られました。
この信頼は、日本企業にとって大きな資産です。しかし、「日本ブランドに好印象を持っていること」と、「目の前の商品を購入すること」は別の判断です。
今の消費者は購入前に、商品が自分の生活に合うかを確認します。
タイの気候でも使いやすいのか、自分の肌質や髪質にも合うのか、価格に見合った価値があるのか、写真どおりの商品が届くのか、正規品なのかといった疑問を持っています。
「日本で人気」「日本品質」と企業が伝えるだけでは、こうした具体的な疑問に答えられません。日本ブランドとしての信頼を入口にしながら、KOLが商品の価値を説明し、KOCがタイの生活者に近い目線で実体験を伝える必要があります。
日本で評価されている商品から、タイの生活者にも評価されている商品へ。
その変化をつくることが、タイ市場におけるインフルエンサーマーケティングの役割です。
タイのEC市場で消費者が確認しているのは、商品の機能や価格だけではありません。
「注文した商品が予定どおり届くのか」
「箱がつぶれたり、中身が壊れたりしていないか」
「万が一、破損していた場合に交換してもらえるのか」
配送やアフターサービスへの不安も、購入判断に影響します。
ShopeeやLazadaには返品・返金の仕組みがあります。しかし、制度が存在することと、購入者が不安なく利用できることは同じではありません。実際の利用者からは、「なかなか商品が届かなかった」「届いたテレビの液晶が割れていた」「販売者とのやり取りに時間がかかった」といった経験談を聞くことがあります。
もちろん、こうした事例だけをもって、タイのECでは商品が正常に届かないと一般化することはできません。一方、そのような体験や口コミが存在すること自体が、次に購入する消費者の心理へ影響します。
特にテレビ、大型家電、精密機器、ガラス製品などは、商品の製造品質だけでは価値が成立しません。倉庫での保管、梱包、積み込み、配送、購入者への受け渡しまで、すべてが適切に行われて初めて、消費者は商品の品質を実感できます。
工場から出荷された時点で壊れていなくても、購入者の手元に届いたときに液晶が割れていれば、消費者にとっては「品質に問題があった購入体験」です。ECにおける品質とは、製品の品質だけでなく、無事に使い始められる状態で届けるところまでを含むのです。
タイのEC利用者の間では、高額商品や壊れやすい商品を購入した際、箱を開けるところから動画を撮影する行動も見られます。これは、SNSへ投稿するための動画ではありません。商品が破損していた場合や、注文した商品が入っていなかった場合に、購入者側に問題がなかったことを示す証拠として撮影されることが重要なのです。
Shopee Thailandの公式ヘルプでも、返品・返金申請の証拠として、問題のある商品の写真や動画に加え、開封前の外箱、配送ラベル、箱の各面、内部の梱包状態などを撮影するよう案内しています。
すべての注文で開封動画が必須という意味ではありません。必要な証拠は、商品カテゴリーや返品理由、個別の審査によって異なります。
それでも、高額商品を購入した消費者が「念のため開封前から撮影しておこう」と感じているのであれば、そこには一定の不安があります。この不安を小さくすることも、日本企業にとって重要なマーケティングになります。
そして、その安心性を伝えるうえでも、KOLとKOCでは異なる役割を持たせられます。
KOLは、商品の華やかな魅力を伝えるためだけの存在ではありません。
日本企業がどのような検品や梱包を行い、万が一の際にどのようなサポートを提供するのかを、分かりやすく伝える役割も担えます。たとえば、家電に詳しいKOLが倉庫や店舗を訪問し、出荷前の検品、梱包資材、落下や衝撃を想定した対策などを紹介します。
テレビであれば、液晶部分をどのように保護しているのか、出荷前に動作確認を行っているのか、商品番号や状態を記録しているのかを説明できます。
こうした企業の取り組みは、商品ページの文章だけでは伝わりにくいものです。
専門性を持つKOLが現場を確認し、消費者に代わって質問することで、「なぜ安心できるのか」を理解しやすいコンテンツへ変えられます。KOLの専門性や影響力を活用し、ブランドとしての保証体制や品質管理を広く伝えるのです。
KOLが安心性の仕組みを説明した後は、KOCが実際の購入体験として証明します。
商品が届いたときの外箱、内部の緩衝材、付属品、設置方法、電源を入れるまでの流れを、一般消費者に近い目線で発信します。
「箱が二重に梱包されていた」
「テレビの角まで保護されていた」
「注文から何日で届いた」
「説明書にタイ語があった」
「問い合わせにタイ語で返信が来た」
こうした情報は、広告写真だけでは伝えられません。
また、破損や不具合が起きた場合には、その後の対応も重要なコンテンツになります。「商品に問題があったが、すぐに交換してもらえた」というKOCの体験は、単なる高評価よりも強い安心感を生む可能性があります。
問題が一度も起きないことだけが、信頼をつくるわけではありません。問題が起きた際に、販売者が逃げず、迅速に対応したことも、ブランドへの信頼になります。
KOLが企業の仕組みを説明し、KOCが実際の体験で裏付ける。この組み合わせによって、「日本企業だから安心」という抽象的なイメージを、目に見える証拠へ変えられます。
配送を外部の物流事業者へ委託している以上、破損や遅延の可能性を完全にゼロにすることは困難です。そのため、「絶対に壊れません」「必ずきれいな状態で届きます」と約束することには注意が必要です。
守れない絶対保証は、問題が起きた際に、かえってブランドへの不信感を強めます。
ブランドとして約束すべきなのは、問題が一件も起きないことではありません。問題を防ぐための対策を行い、万が一の際にも購入者を放置せず、解決まで対応することです。
出荷前に商品の動作と外観を検品する、商品カテゴリーに合った梱包基準を設ける、出荷時の状態を記録する、破損時の連絡先と手順をタイ語で明示するといった取り組みが考えられます。
問い合わせへの回答期限や、交換品を発送するまでの目安を明確にすることも有効です。
つまり、「何も起こらない安心」だけでなく、「何か起きても解決される安心」を提供するのです。この姿勢をKOLが分かりやすく説明し、KOCと一般ユーザーのレビューが実体験として証明すれば、安心性そのものをブランド価値にできます。
KOLからKOCへつなぐだけでは、まだ十分ではありません。
最終的には、KOLとKOCによって生まれた関心や信頼を、ShopeeやLazadaでの購入とレビュー投稿へつなげる必要があります。まず、KOLによって大きな認知をつくります。
次に、年齢、地域、職業、肌質、家族構成、生活スタイルなどが異なる複数のKOCを起用し、さまざまな使用体験を発信します。その投稿から、公式ストアの商品ページへ誘導します。
商品ページでは、KOLやKOCの発信内容と矛盾しない商品説明、価格、配送条件、保証内容、返品・交換の手順を提示します。購入後には、適切なタイミングでレビューを依頼します。レビューの依頼も、単に「感想を書いてください」と伝えるだけではありません。
使用感、サイズ、香り、味、梱包、配送日数、問い合わせ対応など、次の購入者に役立つ質問を提示します。こうして一般ユーザーのレビューが蓄積されれば、KOLやKOCの投稿を見ていない消費者に対しても、商品ページ上で信頼を伝えられるようになります。
KOLの投稿は一定期間で流れていきますが、EC上のレビューは商品ページに残り続けます。そのため、KOL施策をレビューという長期的な資産へ変換する設計が重要です。
KOLの後に一人だけKOCを起用しても、消費者に十分な広がりを感じてもらえないことがあります。KOC施策の強みは、複数の生活者による多様な体験を蓄積できることです。
たとえば、一人のKOLが商品の発売を大きく告知した後、数十人のKOCが一定期間にわたって使用感を投稿します。全員が同じ切り口で書き込むのではなく、それぞれの生活や悩みに合わせた発信を促します。
化粧品であれば、脂性肌、乾燥肌、敏感肌など、異なる肌質のKOCを起用できます。
食品であれば、一人暮らし、子育て家庭、料理好きなど、異なる利用場面を見せられます。
家電であれば、マンション、戸建て、家族世帯、一人暮らしなど、住宅環境ごとの体験を発信できます。
同じ商品について異なる角度から投稿が増えることで、消費者は自分に近い体験を見つけやすくなります。ただし、投稿内容を過度に統一すると、複数のKOCを起用しても広告的に見えてしまいます。
ブランドとして守るべき情報や禁止事項は共有しつつ、感想や表現には一定の自由を残す必要があります。KOCの価値は、完成度の高い広告を量産することではなく、多様で具体的な生活者の声を生み出すことにあるからです。
KOCによる投稿は、それだけで完結させるのではなく、一般ユーザーが参加するきっかけとして活用します。たとえば、KOCの投稿を起点に、自分なりの使い方、使用前後の変化、アレンジ方法、開封から設置までの様子などを投稿してもらう企画を実施できます。
重要なのは、一般ユーザーが真似しやすい投稿形式にすることです。
あまりに完成度の高い映像や、特別な撮影環境が必要な企画では、一般ユーザーが参加しにくくなります。スマートフォンで簡単に撮影できることや、短い感想だけでも参加できることが、UGCを広げるうえでは重要です。
また、高評価を投稿条件にすべきではありません。求めるべきなのは、企業に都合のよい評価ではなく、実際の使用体験です。良い点だけでなく、サイズ、香り、使用環境などによって好みが分かれる点も見えるほうが、消費者は自分に合う商品かどうかを判断しやすくなります。
KOLが大きな話題をつくり、KOCが参加しやすい投稿の型を見せ、一般ユーザーが自分の体験を発信する。この流れができれば、企業から依頼された投稿を超えて、自然なUGCが広がる可能性があります。
KOLとKOCを組み合わせれば、必ず成果が出るわけではありません。同じフォロワー数を持つ発信者でも、影響力の質、視聴者との関係、得意とする商品カテゴリーは異なります。
タイで人気があるからといって、自社商品のターゲットへ届くとは限りません。投稿の再生回数が多くても、視聴者が商品を購入する層と一致していなければ、売上にはつながりにくくなります。
反対に、フォロワー数がそれほど多くないKOCでも、特定のカテゴリーやコミュニティーの中で強い信頼を得ている場合があります。
重要なのは、数字の大きさだけではありません。
「誰に影響を与えているのか」
「なぜその人の発信が信頼されているのか」
「認知、比較、購入のどの段階で起用するのか」
こうした点を見極める必要があります。
また、KOLとKOCの境界は、フォロワー数だけで明確に分けられるものでもありません。専門性の高い小規模な発信者がKOLとして機能することもあれば、一定のフォロワー数を持ちながら、一般消費者に近いKOCとして支持されている人もいます。
そのため、「フォロワー数が何人以上ならKOL」「何人以下ならKOC」という単純な分類だけでは、適切な施策設計はできません。発信者本人の特徴だけでなく、その周囲にいる視聴者やコミュニティーまで確認することが重要です。
KOLからKOCへつなぐ基本的な考え方は、タイをはじめとする東南アジア市場で活用できます。ただし、具体的な設計は、国、商品、価格帯、ターゲット、販売チャネルによって変わります。
化粧品のように使用感や使用前後の変化が重視される商品と、家電のように性能、耐久性、配送、保証が重視される商品では、必要な発信者もコンテンツも異なります。低価格の商品と高額商品でも、購入までに必要な情報量は同じではありません。
また、同じ東南アジアでも、利用されるSNS、消費者が信頼する発信者、ECへの移動方法には違いがあります。タイで機能した施策を、そのままベトナムやインドネシアへ展開しても、同じ結果が得られるとは限りません。
現地で話題になっている発信者を起用するだけでも不十分です。
ブランドとの相性、過去の投稿内容、視聴者の属性、競合商品の紹介状況などを確認せずに起用すると、リーチは獲得できても、ブランドへの信頼や購買につながらない可能性があります。
さらに、KOLとKOCを同時に起用すればよいわけでもありません。
KOLがつくった話題を、どのタイミングでKOCへつなぐのか。SNS上の投稿を、どのようにShopeeやLazadaでの比較・購入へ結び付けるのか。購入後の体験を、どのように次のレビューへつなげるのか。この全体設計によって、同じ発信者を起用しても結果は変わります。
東南アジアのSNSでは、成功しているように見えるインフルエンサー施策を簡単に見つけられます。話題になった動画の構成や起用された発信者、使用されたハッシュタグなど、表面上の要素は確認できます。
しかし、外から見える投稿は施策の一部にすぎません。
なぜそのKOLが選ばれたのか、どのようなターゲットを想定していたのか、KOCへどう展開したのか、EC上の販売体制とどのように連動させたのかまでは分かりません。そのため、競合他社の成功事例をそのまま模倣しても、同じ成果が出るとは限りません。
特に注意したいのは、目立つ数字だけで施策を評価することです。
大きな再生数が出ていても、それがブランドにとって適切な認知だったのか、購入意向のある消費者へ届いたのかは、投稿画面だけでは判断できません。KOCの投稿数が多くても、同じような内容が一斉に並べば、広告的な印象が強くなる可能性があります。
また、SNS上で話題になっても、商品ページの説明、在庫、配送、保証、レビューなどの受け皿が整っていなければ、購買機会を失ってしまいます。KOL、KOC、ECレビューは、それぞれを単独で実施する施策ではありません。
現地の消費者が商品を知り、興味を持ち、比較し、購入し、評価を投稿するまでの流れを踏まえて組み合わせる必要があります。
KOL・KOCマーケティングで難しいのは、発信者を探すことだけではありません。現地の消費者にとって、その発信がどのように受け取られるかを判断することです。
日本企業が魅力だと考えているポイントと、タイの消費者が購入理由として重視するポイントは、必ずしも一致しません。日本で使われている表現をタイ語へ翻訳しただけでは、商品の価値が十分に伝わらないこともあります。
反対に、日本企業にとっては当たり前に見える検品、梱包、保証、問い合わせ対応などが、タイの消費者にとっては大きな安心材料になる場合があります。
KOLには何を説明してもらい、KOCにはどのような体験を見せてもらうのか。
どこまで企業側で内容を指定し、どこから発信者本人の言葉に任せるのか。
こうした判断には、ブランドへの理解だけでなく、現地のSNS文化、消費行動、表現方法への理解が必要です。
起用する人物やコンテンツの形だけを日本側で決めるのではなく、現地の生活者が何を不安に感じ、何を信頼するのかを起点に設計することが重要です。
これまでの東南アジア市場では、「影響力の大きいKOLに紹介してもらえば、一気に認知が広がり、商品も売れる」という期待がありました。当然ながら今現在も、新商品の発売や新規市場への参入において、KOLの影響力は重要です。
しかし、消費者が複数のSNSやECを横断して情報を確認する現在、KOLによる一度の投稿だけで、認知から購入までのすべてを動かすことは難しくなっています。これから求められるのは、KOLをやめてKOCだけに切り替えることではありません。
KOLによって生まれた大きな認知を、KOCによる具体的な使用体験へつなぎ、一般ユーザーのレビューとしてEC上に蓄積していくことです。
KOLは話題をつくる起点になります。
KOCは、その話題を生活者の実感へ変える橋渡し役になります。
一般ユーザーのレビューは、その信頼を次の購入へつなぐブランド資産になります。
ただし、実際に何人のKOLとKOCを起用し、どのSNSで、どの順番で、どのような内容を発信すべきかは、商品や市場によって異なります。重要なのは、施策の形をまねることではなく、自社の商品とターゲットに合った流れを設計して、つくることです。
今回の調査では、商品購入の際に信頼する情報として、一般ユーザーのレビューが92.9%、インフルエンサーが21.4%となりました。しかし、この結果は、「インフルエンサーマーケティングが重要ではない」ことを示すものではありません。
むしろ、インフルエンサーを一括りにせず、KOLとKOCの役割を分けて考える必要性を示しています。
KOLは、高い知名度や専門性を生かし、まだ商品を知らない消費者へ情報を届けます。
KOCは、一般消費者に近い目線から、使用感、梱包、配送、問い合わせ、交換対応など、購入前に知りたい具体的な体験を伝えます。
そして、KOLやKOCの投稿をきっかけに商品を購入した一般ユーザーが、ShopeeやLazadaへレビューを投稿します。そのレビューが、次の消費者の購入を後押しします。
これまでのように「KOLに任せておけば東南アジアで売れる」と考え、投稿の再生数やリーチだけを追う施策では、認知を購買へ十分に転換できない可能性があります。一方、KOCを大量に起用すれば解決するほど、単純なものでもありません。
誰をKOLとして起用し、その影響をどのKOCへつなぎ、どのように一般ユーザーのレビューまで広げるのか。そこには、商品、市場、消費者、SNS、ECを横断した設計が必要です。
「KOLに任せる」から、「KOLからKOCへつなげる」へ。
これが、タイをはじめとする東南アジア市場における、新しいインフルエンサーマーケティングの勝ちパターンです。
クリスクアジアでは、東南アジア各国の市場特性やSNS文化を踏まえ、KOL・KOCの選定から企画、現地向けコンテンツ制作、SNS運用、ECへの導線設計まで一貫して支援しています。
タイ市場で自社商品に適したKOL・KOC施策を検討しているものの、「誰を起用すべきか分からない」「話題化だけで終わらせず、購入やレビューにつなげたい」とお考えの企業様は、ぜひクリスクアジアへご相談ください。
現在クリスクアジアでは、タイをはじめとした東南アジア各国に現地スタッフを配置し、生活者視点に基づいたインバウンド戦略支援を行っています。
特に以下のような課題をお持ちの企業様におすすめです。
・訪日客のSNS投稿を増やしたい
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・現地ユーザーの行動に基づいた施策を設計したい
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