こんにちは!クリスク・アジア編集部です。
東南アジア市場への進出を検討する日本の美容メーカーにとって、タイは常に有力な候補国として挙げられます。
一方で、多くの企業担当者から聞かれるのが、
「タイはすでに競争が激しすぎるのではないか」
「韓国コスメやローカルブランドが強く、日本企業が入り込む余地は少ないのではないか」
という声です。
確かにタイは“美容大国”と呼ばれるほど美容意識が高く、スキンケア、メイクアップ、オーラルケアまで幅広い市場が発展しています。街を歩けばドラッグストアやビューティーショップが並び、SNSでは日々新たな美容トレンドが生まれています。
しかし、本当にタイ市場は参入余地のないレッドオーシャンなのでしょうか。
今回、クリスクタイが実施したアンケート調査を分析すると、一般的なイメージとは異なる消費者ニーズが見えてきました。
そこから浮かび上がったのは、「価格競争」や「流行競争」ではなく、日本企業が得意とする“機能性”こそがタイ市場攻略の鍵であるという事実です。
タイはASEANの中でも美容市場が成熟している国の一つです。
韓国ブランドはもちろん、中国ブランドや欧米ブランド、さらにローカルブランドも数多く存在しています。
特に若年層向けのメイクアップ市場では競争が激しく、TikTokやInstagramを中心にトレンドの移り変わりも早くなっています。
そのため、日本企業の中には、「今さら参入しても勝てない」「すでに市場が埋まっている」と考えるケースも少なくありません。
しかし、この見方は市場の一部分しか見ていません。
競争が激しいのは事実ですが、それは美容への関心が高く、消費者が積極的に商品を試す市場であることの裏返しでもあります。
重要なのは、「何が売れているか」ではなく、「消費者が何を求めているか」を理解することです。
今回の「タイ人へ向けた化粧品・コスメ」調査では、美容・コスメ選びで重視するポイントとして以下の結果が得られました。
日本企業がタイ市場を語る際、「アジア市場だから美白ニーズが高い」という前提で考えることがあります。しかし実際には、美白効果を重視する人は2割程度にとどまりました。
一方で圧倒的に支持されたのが保湿力です。タイは年間を通して高温多湿な国です。
一見すると乾燥とは無縁に思えますが、実際には多くのタイ人女性が肌の乾燥に悩んでいます。
その理由はエアコン環境です。
オフィス、商業施設、カフェ、公共交通機関など、タイでは冷房が強く効いている場所が非常に多くあります。屋外の暑さと室内の冷房環境を繰り返し行き来することで、肌の水分バランスが崩れやすくなるのです。
つまりタイ人女性が求めているのは、「肌を白くする商品」ではなく、「肌のコンディションを整える商品」なのです。
同様に注目すべきなのが、「肌への優しさ・低刺激」が71.4%と高い支持を集めた点です。
この数字は単純な無添加志向を意味しているわけではありません。タイでは年間を通じて強い紫外線にさらされます。さらに近年は大気汚染やPM2.5への関心も高まっています。
消費者は日常的に、
といった外部刺激にさらされています。
そのため、「低刺激」という言葉の背景には、「肌を守りたい」「肌トラブルを避けたい」というニーズが存在しています。
実際には、
などが同じ文脈で評価されていると考えられます。
タイ市場を語る上で欠かせないのがUV対策です。
タイの日差しは日本よりも強く、紫外線対策は美容習慣の一部として定着しています。
興味深いのは、タイでは「美白」のためにUVケアをするというよりも、「肌ダメージを防ぐため」という実用的な目的で利用されている点です。
そのため、
などの需要が高くなっています。
日本メーカーが持つ高品質なUV技術は、十分に差別化要素になり得ます。
近年、日本でもタイコスメへの注目が高まっています。
その理由としてよく挙げられるのが、
といった特徴です。これは裏を返せば、タイ人女性自身がこうした機能を求めているということです。
メイクアップ商品において重要なのは、「かわいい」だけではありません。
タイでは、「一日中崩れない」という実用性が大きな価値になります。
そのため、
といった機能が評価されやすい市場となっています。
またタイ市場は、必ずしも価格重視ではないということです。
むしろ、「効果を実感できるか」が重要視されています。日本企業の中には、「タイ市場は価格競争になる」と考えるケースがあります。
しかし実際には、
があればプレミアム価格でも受け入れられる市場です。
この傾向はコスメだけではありません。
タイを代表するオーラルケアブランドであるDENTISTE(デンティス)は、日本市場でも高い人気を獲得しています。またDarlie(ダーリー)も長年にわたり支持されているブランドです。
これらのブランドに共通するのは、「安い歯磨き粉」ではなく、「機能性の高いオーラルケア商品」であることです。
例えばデンティスは、「朝起きたときの口臭ケア」という明確な課題解決を訴求しています。価格だけで見れば競合商品より高額ですが、多くの消費者に選ばれています。
これは今回のコスメ調査結果とも一致しています。
タイの消費者は、安いから買うのではなく、効果があるから買うのです。
ここで改めて考えたいのが、日本企業の強みです。
日本の美容メーカーは長年、
といった領域を磨いてきました。
実はこれらは、今回の調査で明らかになったタイ人女性のニーズと非常に高い親和性があります。
つまり日本企業は、韓国ブランドのようにトレンド競争をする必要も、中国ブランドのように価格競争をする必要もありません。勝負すべきは、「機能性」です。
タイ市場がレッドオーシャンに見える理由は、競合ブランドの多さにあります。
しかし実際に飽和しているのは、
です。一方で、
といった機能価値を持つ商品には依然として大きな需要があります。
つまりタイ市場は「参入余地のない市場」ではなく、「機能価値を正当に評価してくれる市場」なのです。
タイは美容大国であり、多くの競合ブランドが存在します。
しかし今回の調査結果から見えてきたのは、タイ人女性が単なる流行や価格ではなく、機能性を重視しているという事実でした。保湿力85.7%、低刺激71.4%という結果は、タイ市場において肌を健やかに保つための機能が強く求められていることを示しています。
さらに、プレミアムブランドも高く支持されていることからも、タイでは「機能性プレミアム」が成立していることが分かります。
美容大国タイは確かに競争が激しい市場です。
しかし、それは日本企業にとって不利な市場ではありません。むしろ、品質・安全性・機能性を強みとする日本メーカーにとっては、自社の価値を正しく評価してもらえる市場とも言えるでしょう。
レッドオーシャンに見えるタイ市場には、まだ多くのブルーオーシャンが残されています。その鍵を握るのは、価格ではなく、消費者の課題を解決する機能価値なのです。
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